3.地質・地形と土壌
 地質が植物にとって特別な化学物質を含んでいない場合、植物の生育は「水」に強く支配される。降水量が一定であるとすれば、一定面積の立地を涵養する水の量は上流側斜面からの供給量と土壌の保水力として把握することができる。土壌の保水力は、「土壌の基本的性質」とその「厚さ」が尺度となる。

(1)土壌
 土壌の能力は、物理性と化学性から評価される。化学性は土壌中に含まれる化学成分と含有量に関する項目であり、特に有機物の含有量とリンなどの吸着性などが重用であるが、ここでは省略し、主として物理性について述べる。

【土壌三相】
 土壌は固体、水、空気の3要素から成り立っており、それぞれの占める容積率を「固相率・液相率・気相率」と呼び、気相率と液相率をあわせたものを孔隙率と呼ぶ。当然の事ながら、降雨後、日数が経過するにつれて気相が増加し、液相が減少する。理想的な土壌は、これら3つの相(三相)がそれぞれ1/3を占めているものであるという。

【孔隙率の意味】
 根系は水分や栄養塩類の吸収、成長などの生理的活動に酸素を必要とする。沼沢地生の植物、特に草本植物は葉で生成した酸素ガスを茎や地下茎を通じて根茎に輸送していることが知られている。しかしながら樹木の根系は酸素ガス輸送の能力は低く、生理的活動には土壌中に酸素が存在していることが重要になってくる。したがって、孔隙率の低い土壌では根系の発達は困難であり、地表付近のみに根系を分布せざるを得ない。

【孔隙率の増大要因】
 生物活動を考慮しないならば、土壌中における孔隙の存在は土壌母材の粒度組成と大きな関係がある。岩石が風化して供給される土壌母材が粘土などの微粒成分を多量に含む場合には、いわゆる目詰り状態となり、孔隙率の低い土壌となりやすい。比較的粒径の大きな砂や小礫などが適度に供給される場合には、土壌中に間隙が生じることになり、孔隙率が高くなる。これらの砂や小礫は円礫であるよりも、角張った角礫が孔隙率の増加にはより効果が高い。
 しかしながら、礫(特に巨礫)が多量に存在する場合には、有効な土壌がその分少なくなり、礫間の土壌が優秀な物理性を持っていたとしても総体としては土壌量の少なさとしての効果をもたらすことになる。したがって、理想的な土壌の粒度組成としては、小礫・砂・粘土を適当な比率で含んでいることが必要である。
 土壌の孔隙率は、ミミズなどの土壌動物の活動や根系が腐敗する事などによって次第に増加する。これらの土壌中の動物群集の活動には、そのエネルギー源となる有機物の供給が前提となる。有機物が多量に供給されれば、動物群集の活動は活発となって孔隙率は高まるが、有機物の供給は土壌の能力によって支配されているので、相互作用であって、片方が先走ることはない。

【保水力と粘土成分】
 土壌の保水力は有機物の含有量と粘土成分の含有量に大きく影響を受ける。粘土成分の少ない砂質土壌が保水力が低いことは容易に想像できる。有機物が土壌中で分解される中間産物である腐植酸などの不定形の有機物も保水に貢献する。粘土が多いと保水力は高くなるが、孔隙率は低くなりやすい。
 土壌中に存在する水は、様々な形態で存在している。土壌粒子表面に結合している水分子の結合力は10,000気圧にも及ぶ。このような化合水や数十気圧以上の力で吸着されている水は植物にとっては吸収することができず、利用できない。15気圧程度の力で吸着している毛管水やほとんど吸着されておらず、重力にしたがって下方に移動する重力水などの、流動する水が植物にとって利用できる水である。土壌粒子に吸着される水は、土壌が微粒なものでできているほど土壌粒子の総面積が多くなるので、大きな割合となる。粘土に含まれた水は吸着性が高く、植物にとっては利用しにくい水である。
 まさに、適度に粘土が含まれていることが必要なのである。

(2)地形と土壌
 当然の事ながら、土壌の性質と厚さは尾根と谷では異なっている。山頂や尾根からは常に土壌が流出し、栄養塩類も流亡していく。逆に斜面下部では土壌の堆積と栄養塩類の集積がある。その中間である斜面中部は上方からの供給と流出が均衡し、流れ動いているけれども経年的には変化の少ない「匍行土」と呼ばれる状態である。これら流出と堆積の割合は、単なる傾斜ではなく、地形(傾斜)の変曲点で激変する。凸型の変曲点では侵食傾向が大きく、逆に凹型の変曲点では土壌が厚く堆積しやすい。


花崗岩流紋岩中・古生層(堆積岩)
土壌母材の性質石英砂が多く、保水力が低い。孔隙率が高く、空気を大量に含む。微砂と粘土によって構成される土壌。保水性は高いが孔隙率が低い。角礫と粘土により構成される土壌。保水性が高く、孔隙率も高い。
土壌の深さ斜面上部では侵食により浅いが、斜面中部から下部では深い土壌が形成される。全般的に薄く、厚い土壌は形成されにくい。斜面上部では浅いが、斜面下部では礫を多量に含む厚い土壌が形成される。
土壌の発達しやすさ未熟土の地力は低いが有機物が蓄積されると改善される。全般的に地力が低く、改善されにくい。全般的に地力は高く、良好



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