2.地質と地形
 地形は造山運動などの地核変動に大きく影響されるが、そのような地域性を除くと、地質によって差異がある。地質による地形の違いは、おもに風化の難易とその後の侵食への抵抗性によっている。風化の難易に関しては、岩石単体を対象とする場合と地層全体を対象とする場合で異なる。
 風化には温度変化・氷結と融解・物理的風化・化学的風化などがあるが、温暖な日本の多くの地域では化学的風化が大きな要素となる。化学的風化は水の存在とその移動が大きなファクターである。化学反応は水の存在によって行われるからである。例えば石灰岩は土中を流動する地下水と溶存する炭酸によって溶解度の高い重炭酸カルシウムへと変化し、溶解して流れ去る。したがって、二酸化炭素の供給量、および地下水の流量によって溶解される速度が異なることになる。



 上図は岡山県における地質とその標高を示したものである。標高は1kmメッシュの計測である。
 沖積層の標高分布はもっとも下を通るカーブとなっている。沖積層は河川による堆積物であり、ほぼ河川の標高分布を示していると考えて良かろう。この曲線を河川の縦断面曲線と考えると、上流域で急な傾斜となっており、流れ下るにつれて次第に傾斜が緩やかとなっている状況として理解できる。
 沖積層の標高分布グラフにもっとも近接しているのが、花崗岩地域の標高分布である。全体的には、河川と大きな標高差を持っていないことを示しており、侵食されやすいことを意味している。次いで流紋岩地域の標高分布が低いラインとなっており、流紋岩地域は花崗岩地域よりもやや侵食に抵抗性が高いと考えられる。
 古生層地域は凸型のグラフとなっており、他の地質とは異なる傾向を示している。河川からは大きく高いことを示しており、沖積層の平均値から数百mの標高差を持っている。したがって、古生層地域の地形は、河川から急激に立ち上がり、山頂部は平坦な地形になっていることがわかる。
 
地質地形模式図母岩の性質と侵食に対する抵抗性
花崗岩地域
  • 深成岩であり、結晶が大きい。岩石単体としては風化しにくいが、節理が発達するために地下水は垂直方向に移動しやすく、地層としては深層まで風化が進行する(深層風化)。
  • 風化によって砂質土壌が形成される。砂質の土壌は流水などによって容易に侵食され、山裾でなだらか、頂上に至るほど急峻な地形が形成される。侵食されやすいので、頂上や尾根などでは岩が出やすい。
  • 土壌の透水性が高いため、地中に浸透した水は植物が利用できる深さから失われてしまう率が高い。
  • 川幅は流量に比べて広く、平野も広い。
流紋岩地域
  • 噴出岩であり、結晶は小さいく、節理は発達していない。岩石単体としては花崗岩よりも風化しやすい。
  • 風化によって微砂や粘土を多量に含む堅密な土壌が形成されやすい。
  • 粘土を多量に含む土壌は、全体としては侵食されにくい。
  • 花崗岩地域に比べて尾根が広い事が多い。
  • 平野は狭く、水田面積も狭い。
古生層地域
  • 堆積岩であるので、堆積状況を反映した層理があり、その層理に沿って風化が進行しやすい。しかし、その後の変性によってフォルンフェルス化している場合には、層理は見られず、硬質の岩体となる。砕石が採取されている場所は、このような場所であることが多い。
  • 古生層は風化によって角礫と粘土を多く含む土壌が形成される。土壌は気相・水相・固相のバランスがよい土壌となり、植物の生育には良好な土壌となりやすい。
  • 粘土を多く含むので、水は深層にまで達する事が少なく、風化深度は浅い場合が多い。
  • 全体として侵食に対しては抵抗性が高く、谷は深くて険しく、山頂は高原状となって緩やかな地形となる。




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