2.遷移の方向
植生遷移は動物を含めた生物の営みによって生じる。主に植物の生育が環境に影響を与え、その環境に生物が影響を受け、アクションとリアクションの連なりであるといえる。植物の環境形成能力が遷移を引き起こしているともいえる。このような遷移の方向性について述べる。
(1)単層構造から多層構造への発展
植生が定着し、発達して行くにつれ光を巡る争奪戦が起こる。光の争奪戦には、より背丈の高い植物が有利であり、コケ植物→草本植物→低木→高木への遷移が生じる。これとともに、高木層・亜高木層・低木層・草本層・コケ層などの森林構造が発達する。太陽光の入射角度は日々刻々変化し、風によっても葉の角度が変化するので、太陽光を単一の葉群によってすべて獲得することはできない。上位の葉群によって利用できなかった光エネルギーはより下層の葉群によって利用される。光の有効利用である。
(2)葉量の増大
森林構造が複雑化するにつれ、葉量が増大する。葉量が比較的少ない段階では、葉量の増加は生産量の増加をもたらす。一方、葉量が多すぎる状態になると個葉の光合成能力は低下するので、無制限に葉量が増加するわけではない。
よく発達した森林では、葉面積指数は10を越える。単位面積あたり、10倍の面積を持つ葉が存在しているわけであり、林内が暗いのは当然である。このような大きな葉面積指数の森林では、下層の葉群の光合成効率は大きく低下してしまう。そのために葉面積指数7前後を越えると、葉量が増加しても群落としての総生産量はあまり増加しなくなる。
葉面積指数:単位地表面積あたりの葉面積の比率(cm2/cm2)
具体的には、群落にあわせた面積の方形区を設定し、その中に生育している植物の葉の面積を計測する。いちいち個葉の面積を計測し、合算するのは大変なので、葉の重量を計測し、一部のサンプルで葉面積を計測して総重量から換算する方法をとる。草原では1×1m2程度の面積で行うので比較的容易であるが、森林では最低でも10×10m2の面積に生育している植物の葉を調査するので、大変な作業となる。 |
GPP:1次総生産量
光合成によって生産された総量は、葉面積指数の増加に伴って増加するが、次第に光合成の効率が低下してGPPののびは小さくなる。
NPP:1次純生産量
総生産から呼吸量を差し引いたものが純生産。この純生産が次の年に蓄積され、生長分としてまわされる。一年生草本の場合は、この純生産が収穫される量となるので、農業では葉面積指数4を実現することがもっとも効率がよい。純生産が大きい状態では、次年度への繰り越し部分が大きい。このことは、群落としては生長が急速であることを意味しており、急激に群落が変化することになる。 |
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