イトクズモ 2000年4月〜7月の状況


4月からの状況
 平成12年度3月から全保全池においてイトクズモの発芽・生育が確認されました。その後は、急速に生長して、5、6月には植被率、開花・結実率ともに上昇し、保全池の水面一面を覆う状況になりました。
 本年度からイトクズモの生態調査として、各保全区域にコドラートを設置し、葉長を計測しています。現在までの経過を図に示します。植被率と葉長の月ごとの変化を照らし合わせると、群落密度が増大すると、種の個体サイズは縮小する傾向を見せています。
その他の植物についてはヒシ、ガマ、エビモ、ウキクサ、ヨシなどを確認しています。月1回、除去作業を行ってはいますが、根絶することはできません。6月には福成川側水路においては、昨年に引き続きオニバスが生育確認されました。その他、法面に移植しているチガヤが池中に侵入する傾向を見せており、その生態に関心を持っています。また、その他の生物についてはサギ、カモなどの鳥が頻繁に飛来し、ザリガニ、カエル、トンボなどが生息しています。
図1.水位の変動
 春から梅雨期の水位は設計通りに近いものですが、本年の雨量の少なさが大きく影響し、水位が低下してしまいました。
図2.イトクズモの植比率変化
 6月までは優占状態であったが、水位の低下により急速に植被率が低下し、消滅した。
図3.イトクズモの葉長変化
 4月段階では場所によって違いが見られるが、その後はほぼ一定の3cm前後となっている。


7月の現状
 7月の記録的な少雨と気温上昇により、保全区域の水位は通常時水位より約10cm低下し、一部では陸地化し、底泥が乾燥し、ひび割れしている場所もあります(写真2)。
 現在の保全区域のイトクズモは、福成川側水路では植被率、開花・結実率ともに減少し、ひょうたん池、三日月池ではほぼ枯死しました。底泥中に多くの埋土種子が存在すると考えられますが、このまま長期間降雨がない状態で極端に底泥が乾燥した場合、種子が死滅する可能性も考えられます。また他の植物も同様に減少しており、昨年この時期に水路一面を覆っていたヒシは、現在まばらに生育する程度です。また、オニバスも同様に危険な状態にあり、結実前に枯死する可能性が考えられます。このまま降水が見込めない場合は、給水により、水位の回復や、底泥全面が乾燥してしまわないようにするなどの対策を緊急に講じる必要があります。

写真1.ひょうたん池の様子(7月24日)
水位低下のため一部では陸地化しています。
写真2.陸地化し、乾燥してヒビ割れている底泥。
写真3.ひょうたん池におけるヒシの様子
 毎月の抜根処理にも関わらず速やかな成長を示していましたが、水位低下によって瀕死の状態です。
 浮葉植物の末期を見ているようです。このような水位低下があってもイトクズモが生き残れるのならば、ヒシなどの除去の方法の一つとして考えることができます。

写真4.ザリガニの穴
 保全区域内で生息しているアメリカザリガニが作った穴。水位低下、気温上昇に耐えきれず泥の中に逃げ込んでいます。後日、その穴に続く彼(?)の足跡も確認しました。
写真5.採取した表層土壌
 保全区域のヒビ割れした底泥を採取し、埋土種子を調査しました。
写真6.確認された埋土種子
 全長5mm前後と小さく、特徴のある形をしています。見慣れるとかわいいものです。室外にて発芽実験を行った結果、10日後に2個体の発芽が確認され、種子の生存を確認しました。
 保全区域においての埋土種子はかなりの数であり、水位さえ回復すればイトクズモの再生の可能性は高いと考えられます。

写真・図:森定 伸&栗山みどり(株式会社ウエスコ) HPアシスタント波田善夫

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