鯉が窪湿原の概要


【位置と面積】

【歴史】

【植生の概要】
(1)森林植生
 アカマツ・コナラ・アベマキなどの高木林が発達している。近年、マツ枯れ病によると見られるマツ枯れが散発しており、アカマツの優占状態から落葉広葉樹林へと遷移しつつある。
 森林の特徴としては、構成種は単純で、アセビの生育量が多いことがあげられる。長期間にわたって採草地や放牧地として維持されてきた場所に発達した森林であることが、種組成が貧弱であることの原因であると考えられる。低木層にはアセビが優占しているが、これらは牛が食べないために草地放棄の段階に生育していたものが成長したものと考えられる。土壌は黒土(クロボコ)である。

(2)湿原植生


 湿原は大きく分けると2カ所に発達している。その一つは池の上流域(西側)に発達する典型的な谷湿原であり、オグラセンノウ、ミコシギク、ビッチュウフウロ、リュウキンカなどの生育が見られる。今回、ミゾソバなどの生育が確認され、問題となっているのはこの一角である。もう一つは、池の南側に発達するもので、ヌマガヤ・コイヌノハナヒゲなどの生育する湿原であり、植生としては良好なものである。
 
 ため池の上流域に広がる湿原は、ヨシの生育が見られ、ミコシギクやビッチュウフウロ、ノハナショウブなどの比較的草丈が高く、美しい花を咲かせる植物が多い。
 緩やかな丘陵地から小さな谷が集まって、湿原が形成されている。どの谷も集水域は狭く、流入水路は明確ではない。地表を流れる水の水質は極清浄であるが、堆積層の下を流れる水は栄養素を含んでいるのかも知れない。
 ハンノキの変種であるケハンノキ林が湿原の中部から池に至るまでの地域に広く発達しており、この地域では、春にはリュウキンカが、夏にはビッチュウフウロが一面に咲き乱れる。



 ため池の南側に発達している湿原は、ヨシの生育は見られず、組成的には良好に発達した湿原の様相を示している。全体的には草丈の低いヌマガヤ、ヤチカワズスゲ、オオイヌノハナヒゲ、コイヌノハナヒゲなどが優占しており、サギソウの生育も見られる。
 この湿原も集水域は非常に狭く、湿原の源頭部から10m程度で尾根となる。比較的傾斜はきつく、水量も多いことから、源頭部において湧水の存在が予想される。


(3)森林植生
 鯉が窪湿原周辺の森林は樹高20mを越える、アカマツとアベマキ・コナラなどの優占する二次林である。アカマツは、散発的に枯損しつつあり、湿原への倒伏などが問題となっている。
 低木層には常緑広葉樹であるアセビの生育が優勢であるのもこの森林の特徴であり、湿原周辺に置いて日照を強く制限する原因となっている。アセビが優占している場所では、ほとんどそれ以外の種が欠落している状態となっている。恐らく、過去の放牧時に家畜が食さなかったために残ったものが、放牧中止にともなって生長したものと考えられる。
 また、アラカシなどの常緑カシ類の生育が確認できないのもこの森林の特徴である。概して、種組成の単純化した森林である。


参考文献等



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