1 趣旨説明

亀田 修一(総合情報学部 考古学)


 昨年の第2回『岡山学』シンポジウムでは、「備前焼を科学する」というテーマで、特に「窯がなぜ移動したのか」を検討しました。そして窯の移動には燃料である薪が関わるのではないかという1つの結論を得ることができました。

 今年の第3回『岡山学』シンポジウムでは、そのパート2として、もう少し幅広く検討しようということで、副題を「窯変・形態・流通」としました。
 まず情報科学を専門とする浅山さんに、コンピュータを利用して、破片を元の形に復元し、立体的に見ることができるようにする方法を話していただきます。考古学における発掘調査では、破片で出土することがほとんどですので、この方法が完成すると、簡単に本来の形がわかり、とても便利になると期待しています。

 2番目は、昨年「備前焼を支える松林−流紋岩地域の森林の特性−」というテーマで話していただいた植物生態学の波田さんの、その後の研究成果報告です。今回は副題が「窯業を成立させるための森林資源」ということで、備前地域の植生・森林の面積・森林の生産性などを検討して、現在の地域に窯が築かれた理由を説明していただきます。

 3番目には、まさに地元の備前市教育委員会で備前焼の窯を発掘されている石井さんに最新の発掘調査についてお話しいただきます。備前焼の研究では、ものである備前焼の研究とそれを焼く窯の研究が2本の大きな柱になりますが、今回は、おもに窯の構造について話していただきます。窯の規模や構造は時代とともにどのようにかわったのでしょうか。   

 4番目には、地球科学の山口さんに備前焼の「窯変」について話していただきます。特に備前焼を代表する「火だすき」の赤(緋色)がどのようにできるのか、稲わらの役割などについて科学的に説明してもらいます。

  5番目に
は、蛍光X線分析装置という機械などを使って土器や石器などの流通を研究している白石さんと、考古学の亀田のもとで備前焼の生産と流通を研究している大学院生の京黒さんに、「備前焼の胎土分析と流通−備前焼擂鉢と類似品(明石・堺産擂鉢)の分析−」というテーマで話していただきます。今回のおもなテーマは、備前焼のそっくりさんが大阪府の堺や兵庫県の明石などでも生産され、それが備前焼の地元である岡山にも入ってきているということを、分析装置を使って確認することです。

 以上のように、今回のシンポジウムの発表には統一されたテーマはありません。情報科学、植物生態学、考古学、地球科学、考古理学(分析化学)などいろいろな方面から備前焼を科学的に検討する道があることを知っていただければ幸いです。
 そして、「備前焼が語るおもしろさ」を楽しんでいただければと思います。


もどる / 次のページへ