2 備前焼の三次元形状再構成

    浅山 泰祐(総合情報学部 情報科学科)


  • はじめに
     立体物で独特な表面形状を持つ備前焼は、これまであまり三次元CGとして表現されることはなかった。今回は、「破片から元の全体構造を再構成し、表面属性を様々に変更する」ことを最終的目標とした研究の途中成果を発表する。
    本目標のためには、以下に示すようなプロセスが必要となる。
     1.破片が何の(壺なのか、すり鉢なのか?)一部であるかの推定を行う。
     2.元の形状の大きさや特徴を表すパラメータを推定する。
     3.コンピュータ内で三次元形状を構築する。
     4.構築された三次元形状の表面属性を変更しながら検討を行う。
    本稿では、上記プロセスのうち、3、4の部分の予備実験を行った結果を報告する。

  • 断面図
      図1に示すように、発掘された物品は一般的に、一部を切り取った(右端部)断面図で表現されることが多い。

    図1 備前焼の大甕と壺          図2 断面のトレース[2]
            (南北朝時代、水ノ子岩1978による)[1]

本稿では、以下の条件で予備実験を行った。
 1.再構成する物体は、何らかの回転対称性がある。
 2.ここで扱う断面図は、破片のものでなく、再構成される物体全体を表現する。
 3.コンピュータ中の断面を表す図形は曲線部分を直線の集合で表現する。
図1をコンピュータに取り込んでいる状況を図2に示す。Microsoft Windows 用のトレース・ソフトウエア:BzEdit[2]を利用して、図1の断面部分(右端)を直線の集合としての2次元図形へと変換する。
  • 三次元表示
      トレースされた断面形状を表す2次元図形(図2)を、断面図の中心軸を回転中心として3次元空間中で回転させて元の形状を再現する。なお、全ての3次元表示は POV-RAY for WindowsというCGソフトウエアを利用して作成した。
  • 形状の再現
       再現された3次元形状を表示したものを図3、4に示す。これらの図は、正面より壺の中心を眺めたものである。なお、印刷の都合で白黒であるが、図3の表面色は白色(rgb=<1,1,1>)、図4の表面色は茶色(rgb=<0.5,0.0,0.0>)である。光源は(手前、上方)と(奥、下方)の位置に白色の光を当てている。

      図3 再現CG(白色)        図4 再現CG(茶色)

  • 視点と表面属性
       壺の中を少し覗き込んでいる視点から眺めたようなCGを図5に示す。さらに、表面光沢があり、黒と茶色の備前焼特有の模様がある物体であるように見せた物が図6である。

    図5 再現CG(斜め上)       図6 再現CG(模様、光沢)
  • まとめ
     当初の目的である破片からの全体構造の推定は、現在では完成していない。本稿では、まず壺全体の断面図から三次元形状を再構成できることを示した。さらに、再構成された三次元形状を眺める視点や表面属性を変更することによって、シミュレーションの質を高めることが可能であることを示した。
     これから、画像上のシミュレーションではなく、埋蔵物を物理的に破片から再構成したものを利用して、破片から元の埋蔵物の種類と大きさや特徴を推定できるかどうかを検討していく予定である。

  • 参考文献
      [1] 壺・甕の容量・粘土量を画像から自動算出するプログラムの開発、
      研究代表者:荻野繁春(国立福井工業高等専門学校・一般科目・教授)
      研究分担者:坪川武弘(国立福井工業高等専門学校・一般科目・助教授)、
      URL http://www.fukui-nct.ac.jp/~ogino/09204242.html
      [2] BzEdit version 0.83(Beta) copyright (c) 2000 Tsurumaki yusuke


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