タカノツメ Gamblea innovans (ウコギ科 タカノツメ属) |
タカノツメは落葉の小高木。北海道から九州の林内に生育する。コシアブラと同様に枝分かれをあまりせず、主幹を伸ばして林内のギャップなどでいち早く高くなる戦略である。
根は比較的貧弱で、表層に吸収根を分布させて直根は発達しない。雪が積もる地域では、小さい間は斜面下部側に倒れやすく、毎年倒れては起き上がることを繰り返している。年輪が明瞭ではなく、コシアブラと同様に、経木に利用される。春の芽が出る頃には、タラノキと同様に食卓をかざる。タラノキよりも香りが強く、人によってはこちらの方がより美味であるというが、小生には香りが強すぎる。 主幹あるいは枝先にたくさんの葉を付ける。葉が重ならないように葉柄は長い。葉は通常3枚の小葉からなるが、時に5枚であったり、単葉であったりする。中央の小葉には短い柄があるが、側方の小葉はほぼ無柄。5枚の小葉のものはコシアブラと区別しにくいが、コシアブラには明瞭な柄がある点がよい区別点。
タカノツメの脈腋には毛が多い。この部分を表からみると、膨れ上がっており、ダニ室と呼ぶべきであろう。毛の奥に潜んでいる肉食性のダニを見つけてみたい。
タカノツメの黄葉はコシアブラに比べて鮮やかで美しい。 松枯れ病の蔓延により、1980年頃には低地のマツの大半は枯れてしまい、やがて倒れてしまった。森には大変な痛手で、ギャップだらけといった状態であった。その中で繁茂し始めたのが、沿岸部低地では常緑のカクレミノ、やや内陸の低地ではこのタカノツメが目立つようになった。特に秋になると黄葉が目立って存在を誇示している。しかし、所詮ギャップに依存する樹木であり、倒れてくれる木がなければ更新することは困難であり、やがてはタカノツメが繁茂していた時代があるとの話になるのであろう。
枝先や主幹の先端などの伸びたい場所につける冬芽はすっきり伸びた枝の咲きに、普通についている。来年も勢いよく伸びていくのであろう。一方、伸びたくない枝の先端や枝の途中などでは毎年ほとんど伸びず、葉だけを交換する短枝が形成される。現時点で十分な日照を得ることができるならば、枝への投資を最小にすることによって、最大の利潤を獲得しようとする戦略である。
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