ナンテン Nandina domestica (メギ科 ナンテン属)



 ナンテンは石灰岩地帯に多い常緑の低木。「難を転ずる」との語呂合わせからか、鬼門の方角などに植栽されることも多く、里山などにも野化したものが生育している。6月頃に花を咲かせるが、その頃は梅雨入りのシーズンでもある。開花しているときに長雨があると花粉が破壊されてしまい、果実の稔りが悪くなる。軒下に植えると毎年果実を楽しむことができる。
 幹は直立し、根本から叢生する。あまり太くならず、枝分かれしない。結構強いので杖に利用されたりする。
ナンテンナンテン
 ナンテンの葉には防腐効果がある。魚料理に添えられたり、赤飯に乗せたりするのも、この防腐効果によるものであろう。果実には咳止め効果のあるアルカロイドが含まれており、生薬として使われる。
 冬になるとヒヨドリがやってきて、庭のナンテンを食べていく。ナンテンの実の薬効は強いということなので、食べ過ぎると毒になるのではないかと心配したりするが、結構派手に食べてくれ、一週間もすると見応えのあった赤い実もすっかりなくなってしまう。鳥に食べてもらって遠くに運んでもらうのがナンテンの戦略であるが、このようなアルカロイドを含ませている意味は何であろうか。
 以前、生態学関係のメーリングリスト(jeconet)で興味ある議論があった。無毒でおいしい果実を付けると、鳥はそこに長い時間とどまって、果実を食べ尽くしてしまう。小鳥は果実のなっている母樹のすぐ近くに糞をするので、種子は遠くに散布されないことになる。果実に少し毒を含ませておくと、一度に大量の果実を食べると障害が発生するので、少し食べて他の場所に移動し、違う食べ物を探すことになる。移動した後に糞をするので、種子はもくろみ通り母樹から離れた場所に散布される。という見解である。なるほど、と納得できる。

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