カツラ Cercidiphyllum japonicum (カツラ科 カツラ属)
 カツラは北海道・本州・四国・九州に分布する落葉高木。暖温帯上部にも見られるが、主にブナ林域などの冷温帯の渓流などに生育する。ブナ林の渓流を歩くと、時として高さ30mに達する巨木に出会い、圧倒されることがある。周囲の樹木に比べて際だった太さは、それほど生長速度が早くないと思われるカツラが、急峻な渓流の埋没や浸食などの土砂の移動によく適応できるからであると思う。土砂に埋没されると盛んに地際から発根し、萌芽する。逆に浸食されても太い根はしっかりと太い幹を支えている。数mも根が浮き上がっていることも珍しくはない。
 幹は株立ちとなることが多いが、主幹はしっかりと存在している。枝は長枝と短枝を形成する。長枝は細く、葉は対生する。2〜2.5cmの葉柄があり、通常赤味を帯びる。葉は長さ3〜7cmで基部は浅い心形で先端はやや尖る。葉縁には波状の鋸歯があり、やや肥厚して裏側に巻く。裏面は粉白色である。花は3月から5月、葉の展開に先だって咲くそうで、まだ見たことがない。近年、街路樹として植栽されたものを見るようになったが、冷涼な渓谷に生育する植物にとっては迷惑なようで、生長は芳しくない。
カツラの幼木の枝渓流の谷頭に生育していたカツラの巨木
カツラの葉;葉柄は赤味を帯びるカツラの葉(裏面拡大)


種名一覧にもどる / 科名一覧にもどる / 雑学目次にもどる / HPにもどる