エゾゴゼンタチバナ  Chamaepericlymenum suecicum (L.)Aschers. et Graebn. 
 エゾゴゼンタチバナは北海道東部の釧路や根室地方に見られる小さな多年草。針葉樹林下やミズゴケ湿原に生育し、北アメリカとユーラシア北方にも見られる。
 高さ5-15cm程度でごく小さく、茎と葉の表面に短い毛がまばらにあり、地下茎がよく伸びて広がる。葉は互生して、ゴゼンタチバナのように輪生状とならない。生長の良い個体は茎が途中で分枝する。初夏に茎の先端から花茎を出し、晩夏に球形で径5-6mmの実がきれいに赤く色づく。
 北海道の大雪山系は高山植物の宝庫として有名である。一方、北海道東部の根室地方は低地であるが、沖合いで黒潮と親潮がぶつかり合うため、夏季に海霧が多発する。よって湿潤ではあるが日照が短く、気温が上がりにくい気候の地域である。根室地方に北方要素の植物が多い要因なのであろう。エゾゴゼンタチバナはこの地域に限って分布することを見ると、ゴゼンタチバナよりもさらに北方が古里なのかもしれない。
エゾゴゼンタチバナエゾゴゼンタチバナ
ゴゼンタチバナゴゼンタチバナの生育地
文章・画像:太田 謙
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