ツメレンゲ Orostachys japonica (ベンケイソウ科 イワレンゲ属) |
ツメレンゲは最近少なくなった植物であり、準絶滅危惧種に指定されている。最も多かった生育環境は古い和瓦の屋根であり、花茎が伸びてくるとその存在がわかったものである。瓦の間にほこりや土が詰まった状態が好きなようで、樋や土の上にも生育するが、歩道との縁石にも生えたりする。もちろん本来の生育地は崖であり、岩の上や割れ目などに生育する。 |
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岡山理科大学のA2号館(元の11号館)は石垣の上に建っており、その姿から加計城とも呼ばれている。この石垣にツメレンゲが生育していることは、随分と前から気づいていたが、花の時期を逃していた。今年はA1号館の建設工事の関係からこの石垣を観察できるルートで歩くことがたびたびあり、生長を観察してきた。生育している場所の方位は、南東面である。
ほとんど土があるとは思えないような環境に生育しており、へばりついているのもあるし、土の上にも生育が見られる。とても乾燥に強い植物であるが、根を張り巡らせて一滴の水も逃さないというわけではなさそうである。開花まで3年を要するそうで、堪え忍んでゆっくりと生長する戦略のようである。 葉は多肉質で水分の貯蔵庫であり、晴天が続けばフニャフニャになる。先端は棘に終わるが、食べられていることも多い。豊かな環境では虫に食べられてしまうことが屋根の上などの厳しい環境での生育の原因の一つなのかもしれない。比較的水分条件のよい環境では葉は緑であるが、理科大のものは水分が不足するためか、赤褐色を帯びている。 開花するとその株は枯死するが、その前年などに株の根元に小さなロゼットが分かれて形成されていることが多く、これが生き残っていく。非常に確率の低い種子による定着戦略と確実なロゼットによる生き残り戦略である。 |