ガジュマル Ficus microcarpa  (クワ科 イチジク属)

 ガジュマルは種子島以南に分布し、中国南部から台湾にかけては多い。インドやオーストラリアにも生育するとのこと。漢名は榕樹。英語名はChinese Banyan, India Laured Fig, Malay Banyan。樹高は20mになると記載されているものが多いが、植栽されたものでは10m未満のものが多いと思う。「絞め殺しの木」であり、大木の梢に芽生えて気根を伸ばし、やがて着生した樹木を枯死させて独立してしまった場合には、結果的にかなりの樹高となってしまう。(3枚目の画像の中心部には、枯れた大木が写っているのだがわかるであろうか?)

 果実は直径1cmほどで、鳥に食べられて種子散布される。イチジクの仲間なので、内部にたくさんの花が付き、種子が稔る。したがってイチジク状の実は、厳密には花が付く場所であって花託ということになる。果実が付いていない個体も多く、枝先に少数つける場合も多い。
ガジュマル(奄美加計呂間島):中心には絞め殺された大木が絞め殺しに成功したガジュマル絞め殺しに成功したガジュマル

 南国では気根を垂らしたガジュマルの特異な姿が印象に残る。街路樹としてもたくさん植栽されており、繁殖・栽培が容易で面白い樹形に育てることができるので、鉢物や盆栽に仕立てられることも多い。防風林としても利用され、歴史のある民家や寺院などには大きく生長したガジュマルが、のれんを連想させるほどの気根を垂らしていることもある。気根が目立つ場合もあるし、ほとんど気根を出していない場合もあって、土壌条件なのか、樹齢なのかと気に掛かる。

奄美大島西阿室のガジュマル屋久島中間のガジュマル

 屋久島や奄美大島などの漁村にはガジュマルの大木が生育しており、防風林として保護されてきたものであると思う。中国や東南アジアにも、おそらくガジュマルと思える樹木が植栽されており、面白い樹形となっている。どれくらいの樹齢なのかわかりにくいが、結果的に、大木あるいは老木として注目されることになる。
 台湾老樹地図(台湾老樹400選)では、そのうち155本がガジュマル(榕樹)である。しかしながら推定樹齢はそれほどでもなく、100とか200年などの大まかな数字が記述されている。

大木から垂れ下がった根
ガジュマルの気根幹にまとわり付いた細い根

 ガジュマルの根は細く、垂れ下がっているのを見ると、アプロヘアのドレッッドロックスを連想させる。大きな樹木でははるか上空から細い根が伸びてきて、地表面付近では風で揺れるために土中にもぐることができず、切りそろえたように同じ高さとなっている。何らかのきっかけで土中に伸びることができると急速に太くなり、幹に見えるようになる。
 細い根を意図的に地面に付け、門を作ったり舞台を作ったりなどの例もある。


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