ジュンサイ Brasenia schreberi (スイレン科 ジュンサイ属) |
ジュンサイは中栄養の溜池などに生育する多年生の水草で、日本全国に分布し、アジア東部、アフリカ、オーストラリア、北・中米など世界に広く分布している。葉は楕円形で切れ目がなく、裏面は赤紫色を帯びる。葉の裏面や若芽、葉柄は透明な粘液に覆われており、和名である潤菜の由来となっている。若芽のは摘み取っておすましの具などにし、瓶詰めなどに加工されて販売されている。6月頃から夏にかけ、暗赤色の目立たない花を咲かせる。めしべが先に成熟し、その後におしべが伸びてくる。 ジュンサイの沈水部分は粘液に包まれている。これがツルリとした食感となって、若い芽が食材として利用されるわけではあるが、考えてみれば食感だけで味はまったくない。このような粘液は何の役割があるのであろうか。水中に生活する昆虫や魚にとって、水草は餌の1つである。ジュンサイも格好の食材となる可能性がある。しかしながらこのようなまったく味のない(栄養価のないと思える)粘液に包まれておれば、水中の動物たちにとっては餌であるとは認識できないのではなかろうか。カエルの卵が同じように粘液に包まれているのも、同様な理屈ではないかと思う。 葉の裏面を粘液で覆ってしまうと二酸化炭素や酸素ガスなどの交換はやりにくくなる。そこで水面より上に出た葉の表面に関しては、粘液をまとうことができず、ガス交換の場として露出させることになる。このような状態は草食昆虫などにはもってこいの餌となってしまい、食べられてしまうことになる。ジュンサイハムシという虫の仕業らしいがまだしっかりと採食中の姿を見たことがない。これだけ食べられても水草の葉のサイクルは短いので、あまりダメージにはならないのであろう。 ジュンサイの生育地はヒシが繁茂するほどの不栄養条件ではなく、また湿原中の池ほど貧栄養な場所でもない。コイなどの草食魚類がいると、競争相手を駆逐してくれそうである。今回のジュンサイの画像は岡山県新見市鯉ヶ窪湿原の下流側にあるため池。観賞用の錦鯉が放流されている。水質はすこぶる貧栄養。 |
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