コマクサ Dicentra peregrina (ケシ科 コマクサ属)
 コマクサは北海道・本州中部以北、千島・カムチャッカ・樺太・シベリア東部に分布する多年草。高山の山頂や尾根などの荒原に生育する。海抜3000m前後の山頂や尾根などの気候的に厳しい場所では、凍結・融解作用や昼夜の温度差が激しいために岩石が割れたり、砂利・砂などが形成されやすい。礫や砂は持続的に崩落しやすいので、植物の生育は困難である場合が多い。このような荒原の砂礫地には、土壌の移動に適応した高山植物のみが生育でき、コマクサもその代表格である。コマクサは移動しにくい深部に根茎があり、砂礫の上に葉や花を展開する。安定した場所では他の植物が侵入し、土壌の崩落が激しい場所ではコマクサでも生育ができない。コマクサの生育地は砂礫の大きさや傾斜の微妙なバランスの場所に限定されている。凍結・融解による岩石の割れ方は、地質によって異なっているので、母岩によってもコマクサの生育地は制約されていることになる。
 コマクサの葉は全て地中の茎から出る根生葉であり、2回3出複葉で、小葉はさらに小さく裂けている。全体に粉白色であり、画像でも水をはじいているのがわかる。花は特徴があり、長さ約2cm。花弁は4枚で、外側の2枚はそりあがっている。
 昔は結構お目にかかることができた記憶があるが、生育地が立入禁止になっていたりして、長らくお目にかかれていない。この画像は六甲高山植物園で栽培されたものである。土壌などは生育地のイメージが良く再現されている。
コマクサ:六甲高山植物園での栽培(K.Mさん提供)コマクサの花
外側の花弁は反り返るコマクサの葉
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