ホロムイイチゴ  Rubus chamaemorus L.       (バラ科 キイチゴ属
 ホロムイイチゴは、湿原生の多年草。北海道の湿原に普通で、湿原のミズゴケの中を地下茎が伸びて広がり、節から地上茎を出して葉と花をつける。キイチゴ属の仲間は低木で棘を持つことが多いが、ホロムイイチゴは草本で棘がない。雌雄異株。名前は幌向苺の意味で、幌向は初めて採取された地名にちなむ。詳しくはホロムイソウの頁を参照していただきたい。
 花は初夏で、果実は夏に熟するが、特に貧栄養の湿原では花をつけることができない個体が多い。葉は1つの地上茎に1-3枚つき、掌状に弱く3-5烈し、縁に鋸歯がある。葉柄の付け根に向かって窄まった形になることも多く、漏斗の形にも見える。質感は厚く、葉の裏と葉柄には荒く毛が生え、裏面に葉脈が突出する。托葉が宿存し、膜質で長さ5mmほど。
 生態的にはカラフトイソツツジとよく競合するように感じるが、より植生高の低い、ミズゴケが繁茂している部分によく侵入しているように思う。ただ花をつけた個体を見るのは、湿原中でやや泥炭の分解が進んだ場所であることが多いように思う。
ホロムイイチゴの葉ホロムイイチゴの生育地
ホロムイイチゴの托葉ホロムイイチゴの葉の裏

文章・画像:太田 謙
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