シャリンバイ Rhaphiolepis indica var. umbellata (バラ科 シャリンバイ属)



 シャリンバイは暖地の海岸に生育する常緑の低木あるいは小高木。葉は厚く、きょ歯があるものからないものまである。花は春に咲き、厚ぼったいものの、バラ科の特徴をよく示している。果実は直径1cmほどで、中に合着くした種子が2つ入っている。元々海岸の植物であり、乾燥に強いことに着目され、近年は街路樹や路側帯に植栽されることが多くなった。岡山県では島の海岸など、極限られた場所にしか生育が見られなかったが、各地で植栽された結果、明るい二次林の尾根筋などにも時折芽生えているものが見られるようになってきた。
 シャリンバイは奄美大島の特産品である大島紬の染色に使用されることでも有名。シャリンバイの材や根を煎じ、染色に使用するという。タンニンをたくさん含んでいるのかもしれない。和名は枝が車輪の車軸状に一カ所から放射状に多数枝分かれするとの意味。
シャリンバイシャリンバイ
 この仲間の分類は図鑑によって和名や学名の使い方が異なっており、混乱を生じている。「基本種であるシャリンバイ(あるいはタチシャリンバイ var. umbellata)は葉がやや細くてきょ歯があるが、変種であるマルバシャリンバイ(あるいはシャリンバイ var. integerrima)は葉が広い楕円形でほとんどきょ歯がないか、わずかに鈍きょ歯があるものを指している」、とされてきたが、これらは同一種内の変異であり、東南アジアにも広く分布する(インド)シャリンバイとと同じものであるということがわかった・・・という経緯らしい。
 小生が最初にシャリンバイを見たのは奄美大島であった。森の中に生育している個体は高さ5m以上もあり、確かにタチシャリンバイと呼びたくなるような立派な樹木であった。岡山県の大多府島に生育していたものは樹形は低木であり、とても同じものとは思えない状況ではあったが、葉は細く、きょ歯が顕著なもので、やはりタチシャリンバイと同じタイプのものである。その後植栽されたものにはきょ歯がないものや中間型があって困ったが、統一されてすべてシャリンバイで良いことになった。種がまとまることは、同定に苦しむことが少なくなり、結構なことである。

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