ネコヤナギ Salix gracilistyla (ヤナギ科 ヤナギ属)



 ネコヤナギは北海道から九州に分布する落葉の低木。山間渓流や中流の流れが急な場所などに生育する。雌雄異株であり、春に葉の展開に先立って花序を出す。若い雄花序は葯(やく)が紅色なので、全体が紅色に見えるがやがて葯が黒色になって長くなる。雌花序は絹毛が目立つのでふさふさとした感触であり、これをネコの尻尾にみたてて、ネコヤナギの和名が付いた。渓流の春を知らせる植物である。
ネコヤナギ
ネコヤナギの雄花序ネコヤナギの雄花序ネコヤナギの雌花序

 ヤナギの仲間は河川などの水湿地に多く生育する樹木であるが、ネコヤナギは最も流速の速い場所に生育できるヤナギの仲間である。渓流などの流れの速い場所に生育する植物としてはネコヤナギの他にツルヨシがある。どちらも水の流れには強いのだが、どうやらネコヤナギの方が最終的には強いらしい。その強さの秘密は何であろうか? 急流に生育できるためには、物理的にしっかりしていなければならない。ネコヤナギを折り取ろうとすると、材木の部分は折れるのだが、樹皮はなかなか切り取ることができない。皮層中の繊維が強靱なのである。このような増水時の損傷に対する抵抗性とともに、樹木であるので寿命が長いことも関係しているであろう。
ネコヤナギ群落

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