シダレヤナギ Salix babylonica (ヤナギ科 ヤナギ)



 シダレヤナギは中国原産の落葉高木で、奈良時代に持ち込まれたという。各地で水路沿いや公園などに植栽されており、街路樹にも多用されている。雌雄異株であるが、雌株は少なく、繁殖は挿し木による。
 風に柳、暖簾に腕押し・・・梢から垂れ下がった枝は風にそよいでまことに涼しげである。この清涼感が樹下の「お化け」を連想させるのであろうか。お化けは別として、このような垂れ下がる枝は風には強いであろう。葉や枝を風に吹き飛ばされない仕組みとしては当を得ている。太い幹や枝はちゃんと直立しているので立ち上がるほどの強い幹を作ることができないわけではなく、枝先だけを垂らしている。葉を支えるために枝に投資するのではなく、当面は細い枝でぶら下げ、省力化して無駄を省いているように考えることができる。このような戦略は周辺にもたくさんの樹木が生育しているような場所では通用しない。樹木が点々としか生育していない場所や、水際で少なくとも片方は水面に面していて光があたることが保証されているような場合にのみ、通用する戦略である。
 ヤナギの仲間は挿し木によって簡単に繁殖する。逆に言えば、枝が風に吹き飛ばされ、あるいは水に流されていく方法も1つの繁殖方法である。小さな種子による繁殖よりも効率は高いのではなかろうか。河川の調査を行うと、時折シダレヤナギが河原に生育している。上流から流されてきた枝から定着したのではないかと思う。普段の風にはそこそこ柳腰で対応し、強風には吹き飛ばされて子供を作って繁殖する。こんな人生もアリ である。
シダレヤナギシダレヤナギ
シダレヤナギシダレヤナギの雄花序

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