ツクバネ Buckleya lanceolata (Sieb. et Zucc.) Miq. (ビャクダン科 ツクバネ属)



 ツクバネは,本州,四国,九州北部に分布する落葉低木で,ツクバネ属植物は日本には本種のみである。なるほど似た趣のある種は思い浮かばない。スギ,ヒノキ,モミなどの根に半寄生する植物で,生育地は乾燥する急斜面や尾根に限られるという。生育地については,なるほどと思うが,付近にスギ・ヒノキが見あたらないことが多い。?である。岡山県下では天然のヒノキなど,ほとんど残っていないはずで,普段から植林樹種としか見ていないわけで,軽視しているのであろうか。いやいや見あたらない。ネズやマツでも良いのか?,半寄生なので寄生できなくても大丈夫なのか?などと考えてしまう。(注:日本の樹木、山と渓谷社1985には、「ツガ・モミ・アセビなどに半寄生」と記載されている)
 半寄生というと,ゴマノハグサ科のヒキヨモギのような草本植物も思い浮かぶ。代表的な生育地としてはススキ草原を挙げることが出来る。放置すると徐々に森林へと移行するような場所であっても,人為の影響等(例えば野焼き)により,草原という遷移段階が維持されているような場所に成立する。
 ツクバネはどうであろう。岩峰などの尾根筋や,露岩や浮石の多い急傾斜地に見られる。これらの地形地では,水分条件の違いから発達する植生は異なるわけであるが,豊かな土壌は形成されにくい。何れも貯まるより失う量が多いような場所という意味では共通要素がある。このような場所で発達できる植生は限られており,日照条件も定常的或いは不定期的に確保される。水分・養分が足らなければ,そのような立地で成立できる植生の樹木からかすめ取ることが出来る。なかなかすごい能力の持ち主と思いがちであるが,それほど多く見られるわけではないところを見ると,そのような生育立地自体が限られているということなのであろう。
 名前の由来は,羽根突きの羽に似ているから。どちらが元祖なのかこれまた考え込んでしまうほどの精巧なつくりである。風に乗って飛んでいきそうであるが,誰かが突いてくれればもっと遠くへ飛びそうである。
ツクバネツクバネ
 ツクバネは雌雄異株である。雌花は,花期に上の果の写真とほぼ同じような形態を備えており,枝先に1個つく。4枚の羽は花びらではない,本当の花は羽の付け根中央に咲くが,羽がすごすぎて目立たないように思う。雄花は下の写真のように,枝先に集散花序をなしてつく。
ツクバネツクバネ
(写真 雄花:勝山、92/05/12 それ以外は新見市、00/09/27)
【画像、文章:難波靖司氏】

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