アジサイ Hydrangea macrophylla (ユキノシタ科 アジサイ属)
アジサイはガクアジサイ Hydrangea macrophylla forma normalis から改良されたもので、広く庭園などに栽培されている。原種のガクアジサイは神奈川県、伊豆半島、伊豆諸島の海岸付近の日当たりのよい場所に生育しているが、これも広く栽培されている。
ガクアジサイは中心部に両性花があり、周辺に装飾花がある。装飾花の3〜5枚の花弁に見えるものは萼(ガク)である。装飾花にも雌しべと雄しべがあるが、結実しない。中央部の両性花は5枚の花弁があり、10本の雄しべがある。アジサイは、ガクアジサイの両性花が全て装飾花に変化したもので、結実しない。
アジサイの花は梅雨の季節、長い期間開花している(ように見える)。高冷地では夏を過ぎても装飾花がそのまま残り、楽しませてくれる。本来の花弁は受粉すると役目を終え、短い期間で落ちてしまうのであるが、装飾花の花弁(萼)は長い期間残存するためである。
紫陽花−花の色が七変化−
アジサイの花の色は咲き始めの淡い青から次第に色濃くなり、やがて赤色が加わって紫色となる。このような花の色の変化から、花言葉には「心変わり」とか「移り気」などが当てられたりする。花色が変化する現象はブルーイングといい、ほとんどの植物でおこるのであるが、濃い色の花や開花期間が短い植物ではわかりにくい。通常は花の色が暗くなってしまうので嫌われるが、花期が長いアジサイならではの味わいである。
アジサイは大和撫子のイメージ
アジサイは幕末(1823)にオランダ商館にやってきた医師であるシーボルト(ドイツ人)の愛した植物の1つである。シーボルトは医師としての立場が有名であるが、動植物に関しても深い知識を持った科学者でもあった。日本にいた間、たくさんの動植物を採取し、絵描きに詳細な図を書かせている。標本も作成して母国にも送っており、ヨーロッパにおける日本の植物の研究の基礎になっている。日本に居た期間は妻帯しており、「滝」という名前の女性と結婚している。その名を取って、アジサイにはOtakusa (お滝さん)の名を付けている。アジサイは日本女性のイメージなのであろうか。