ボロボロノキ Schoepfia jasminodora (ボロボロノキ科 ボロボロノキ属)
 4月の新緑の中、岡山県自然保護センターを歩いていると見たことのない樹木が花を咲かせていた。名札が掛かっていないし、似た植物を知らないので調べようがない。質問するとボロボロノキであるという。名前を聞いたことがない。調べてみると九州から沖縄にかけて分布する植物であり、日本にはこの科では1種のみが分布するとのこと。しかし、なんともかわいそうな名前をつけていただいたものである。

ボロボロノキ Schoepfia jasminodora
ボロボロノキの花序(短花柱花)果実を稔らせたボロボロノキ
短花柱花の花長花柱花の花
 花の先端は緑色を帯び、スノーフレークを連想させるベル型。学名にあるように、あたりに心地よい香りを漂わせている。話していると近隣にもう1本あるというので再訪してみた。その個体は花数が少なく、葉はより大きく、香りは感じることができなかった。観察すると、花がたくさん付いていた個体は花筒の出口に毛があり、雌蕊は短くて花筒の奥に控えている。花が少ししか付いていなかった個体は雌蕊が花筒から飛び出している。短花柱花と長花柱花である。その後、果実を付けたのは短花柱花であり、雌株であるということになる。ネットサーフィンすると、花の形にはかなりの変異がある。なお、花冠の先端は4つあるいは5つに分かれているものがあった。

ボロボロノキの葉ボロボロノキの葉
ボロボロノキの若い果実ボロボロノキの樹皮
 花の形には二形があり、これについて雌雄の違いであるとの説があるが、両者共に果実が稔るので、この例では雌雄の違いではないと思われる。岡山県自然保護センターに植栽された2本では、花や果実の付き方や葉の大きさが異なる。変異がありそうで、九州や沖縄での自生地での状況をジックリ眺めたい。
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