フキヤミツバ Sanicula tuberculata (セリ科 ウマノミツバ属) |
フキヤミツバは、本州〜九州と朝鮮半島中南部に分布する、小型の多年草。早春に根出葉を展開して、4月の中頃から花をつける。花茎状の茎の高さは10センチ程度で、頂部に葉状の総苞片が対生し、その中央から2〜3個の小散形花序を出す。根出葉は3センチ程度で、大きく3裂し、裂片は更に2〜3裂するため5裂したものが多い。この根出葉は、一見すると同属のウマノミツバの葉に似る。和名は「吹屋三つ葉」であり、最初の発見地である岡山県北西部に位置する成羽町吹屋による。私自身にとって本種は、岡山県に住む者として一度は目にしたい植物の一つであったが、この度、同町在住の高田氏のご案内により、晴れてお目にかかることが出来た。氏のお話では、命名箇所となった自生地では、山林利用の変化により数十年前に消滅してしまったそうである。岡山県内の分布は石灰岩地域に偏るようであり、林道の脇や林床の明るいアカマツ林内などで見かけることが多いそうである。しかし、今風に言うと「激レア(非常に珍しい)」な植物であり、先ほど発行された岡山県版レッドデータブック内においても絶滅危惧種として扱われている。高田氏は数十年来(私の年齢以上の歳月)本種を見守ってこられており、過去には林道の整備により人知れず消滅した自生地もあったそうである。このヘンテコな植物を、これから先も目にすることができるようにすることが今の私達の務めなのでしょう。 |
文章・画像:森定 伸 |