ツリガネニンジン Adenophora triphylla var. japonica (キキョウ科 ツリガネニンジン属)



 ツリガネニンジンは山野のススキ草原や溜池の堰堤などに生育する多年草。キキョウなどと共に、秋の到来を感じさせる植物の1つである。北海道から九州の各地に分布し、千島列島などにも生育する。根生葉は丸く、長い柄があるがその後に伸びた茎に付く葉は楕円形の葉となり、葉柄はほとんどなくなり、(2)3〜4枚の輪生となる。開花時には根生葉はなくなるとされるが、夏から秋にかけて刈り取られると根生葉を再生し、花茎も再生する。地下に大きな根があり、これに養分を貯蔵している。夏に刈り取られると速やかに地上部を回復する戦略をとっており、刈り取り草原によく適応した方法である。しかし、これほどの葉形の変化は、驚きである。年間を通じての観察が必要である。
 和名は釣り鐘状の花が咲き、大きな根を朝鮮人参に例えたものという。8月〜9月に可憐な花を咲かせる。顎は細くて糸状であり、雌しべは釣り鐘型の花から少し突出する。花が開いた直後は雌しべの先端はこん棒状であるが、その後先端は3つに分かれて広がる。
ツリガネニンジンツリガネニンジンの花
ツリガネニンジンの葉刈り取り後に再生した根生葉
 ツリガネニンジンは変異の多い植物であり、花冠の大きさや形、葉の形などに変異が大きい。中国地方では基本種のサイヨウシャジンが分布していることもあって、同定に困ることが多い。サイヨウシャジンはツリガネニンジンに比べて花冠の先端がやや狭まって壷状になること、より雌しべが突出することなどで分けられる。

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