ネコヤマヒゴタイ Saussurea modesta Kitam. (キク科 トウヒレン属) |
環境省の植生図作成業務の一環で、広島県庄原市西城の猫山に登ってきた。山体が蛇紋岩であり、山頂付近に蛇紋岩特有の植生が発達しているかどうかを判断するためであった。山頂の草原に出ると、幸いにもネコヤマヒゴタイが咲き残っていた。トウヒレンの仲間は地方種が多く、同定に困ることがあるが、名前の由来となった猫山のネコヤマヒゴタイなので、本家本元での画像である。分布は中国から関東に点々と分布する。 ネコヤマヒゴタイは蛇紋岩の露岩が見られる山頂の尾根に生育していた。海抜は1,100m程度であり、ブナの二次林に隣接している。周囲の森林は40〜50年前に伐採された場所であるが、イブキジャコウソウなども生育しており、山頂付近が長い年月草原として維持されてきたことは間違いない。草原として維持されてき原因は、蛇紋岩であること、地形が急峻なので土壌が流亡しやすいこと、冬季に雪庇が形成されて雪崩が発生しやすいこと、強風の影響が強いこと、などが考えられる。しかし、ネコヤマヒゴタイの生育は道沿いに多いことから、ササが茂りすぎであり、シカなどの大型哺乳類の利用も昔はあったのではないかと思う。 さて、ネコヤマヒゴタイはキリガミネトウヒレンの別名も持っている。小生にとってはキリガミネトウヒレンのほうがなじみがある。昔、霧ヶ峰地域の調査に携わっていた頃、キリガミネトウヒレンはよく眼にしたものであった。霧ヶ峰では、湿原の周辺でよく見たわけであるが、湿原と密接に絡んでいるわけではない。猫山の山頂に生育するネコヤマヒゴタイも蛇紋岩と密接に絡んでいるわけではなく、長い年月にわたって草原として維持されてきたという歴史が大切なのであろう。 |
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