ノアザミ Cirsium japonicum (キク科 アザミ属)
ノアザミは本州、四国、九州に分布する多年生の草本。農耕地周辺の草原や畦などに普通に生育する。タンポポと同じように冬にはロゼットを形成し、地面に葉を広げている。このようなロゼットを形成する植物は、刈り取りが行われることが生育に必要である。5月中頃に花茎を形成し、7月頃まで順次花を咲かせる。アザミ属の植物は同定しにくいものが多いが、この季節に人里で咲くアザミはノアザミであると思ってよい。葉には鋭い棘があり、大型草食獣によって食べられにくくなっている。
ノアザミの花をよく見ると、花弁が5枚の筒状花がたくさん集まって頭状花を形成していることがわかる。若い花はたくさんの花粉を放出しており、その後に雌しべがよく目立つようになる。雄しべの葯は5つが合わさって雌しべを包んで筒状になっている(画像の濃紫色の部分)。雄しべが先に成熟し、先端から花粉を放出する。その後から雌しべが花粉を押し出すように生長する。その際には、先端が2つに分かれた柱頭の部分は合わさって閉じており、受精がおこらない。まず雄しべが成熟し、後から雌しべが成熟することによって、自家受粉を避けている。これを雄性先熟という。