ベニバナセンブリ Centaurium erythraea  (リンドウ科 シマセンブリ属)



  ヨーロッパから中央アジアにかけて広く分布し,日本や北アメリカにも帰化している。高さ60センチくらいの一年草或いは越年草で,ピンク色の花をつける(朝日新聞社.植物の世界026:55.)。

 ロックガーデンなどで栽培されると聞くが,種苗が販売されている様子は無い。栽品からの逸出・野化ではなく、何らかの理由により帰化したのではなかろうか。
 葉の付き様が,イヌセンブリに似ていると言われれば,そうかな?とも思えるが,しかし名前を聞くまでは,全くもって何処がセンブリなのやらさっぱり理解に苦しむ(聞いてもさっぱり・・・)。
 この植物を初めて見たのは,平成9年の晩春の頃で,とある岡山県南部の埋め立て地であった(下の右側の写真のような幼個体であった。)。とはいえ,当時は同定することがでませんでした。しばらく間をおいて,昨年の春,県南の別の場所で見覚えのある植物を見かけ,今度こそ花を!!,そして,花期に訪れる機会にも恵まれ,モノも持ち帰り,写真も撮り,後は名前を調べるだけ!!。
 いかにも帰化っぽい風貌に,まず帰化植物図鑑から・・・・無いとはどういうこと?在来?。
 軽めのパニックに陥りながら,野生植物図鑑の総絵合わせモードに突入・・・・。
 似ているものにたどり着いては,分布が違い,形態が違い・・・・・無いんじゃない?かな?。
 結局は,帰化植物に造詣の深い諸先生にお伺いをたてることにあいなりまして,やっとベニバナセンブリという名前にたどり着くことが出来ました。比較的スムーズに名前をご教示いただけたのは,既に岡山県内の瀬戸町,倉敷市,寄島町,岡山市で確認例があったからであろうと思います(それなりに知られた植物であったという意味。)。
 お願いだから図鑑に載っていない植物は勘弁して!っという思い出の植物なのですが,先日,チビと浦安方面の公園へ遊びに行っていて,再び見かけましたので,写真におさめるととものご報告させていただきます。

 全草柔らかく,淡い緑色で,やや光沢があり,無毛。葉は対生し,やや三角状の長楕円形で全縁,先端は鈍頭。葉柄は無く,茎に合着する(茎を抱く)。葉の両側は裏面に反り返ることが多く,中央の脈は,表面にくぼみ,裏面に突出する。
 幼い個体は,節の間が狭く,何やら多肉植物のようにも見える。葉が丸っこく,中央脈も含め3脈が見られることが多い。中央脈は,表面にくぼみ,両側の脈は,表面にやや突出する。

 茎の断面は四角形で,角は稜となる。或いは翼をなす。
 苦いかどうかは知らないです。

 生育地は,公園内の親水広場みたいな感じの所で,水辺に近い場所の裸地である。水辺や抽水域はヨシにより占められているが,かなりの頻度で刈り取りを行っているみたい。表土は比較的新しいマサ土である。左側の写真は,水辺より少し高く,乾燥気味なのでしょうか,ベニバナセンブリも小さく,他,小さいメヒシバがちらほら。左側の写真は水辺に近く,ヨシがひょこり顔を出しています。やや湿っぽいのでしょうか,セイタカアワダチソウが増えつつあり,ベニバナセンブリも比較的大きい。
 このような越年草(一年草)が生育できるには,秋(春)から開花結実までの期間,明るい場所であるという事が一つの条件なのでしょう。このような場所が,県南の埋め立て地,干拓地にはたくさんあり,新手の外人が入り込んでくる余地はまだまだたくさんありそうです。
(写真&文章=岡山県環境保全事業団:難波靖司:2000年7月)

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