カラスビシャク Pinellia ternata (サトイモ科 ハンゲ属) |
小型のテンナンショウ属植物といいたいような植物。特にウラシマソウによく似ている。昔は畑の周辺などによく生育していた記憶があるが、最近はとんと出会わない。山間の粗放な畑が放棄されてしまったことが大きな原因かもしれない。比較的肥沃な立地に生育し、乾燥は苦手。 カラスビシャクは日本全国に分布し、中国・朝鮮にも生育が認められるという。農耕の伝来にともなってもたらされた史前帰化植物であると考えられている。地下に塊茎を持ち、種子でも繁殖し、葉柄の地表面付近から3小葉の分岐点に当たる葉柄の末端にムカゴを形成するなど、農耕地という耕される環境でしぶとく繁殖できる能力を備えている。 若い個体から出る葉は心形であり、1枚か2枚程度。やがて3小葉からなる葉を形成する。比較的柔らかく、また葉量も少ないことから、競合植物が少ないことが生育条件のひとつであると考えられる。長い葉柄も、耕耘で深い場所に埋もれてしまった塊茎から地表への葉の展開を保証している。 3種の品種が認められており、ここに掲載したものは、苞の内側が暗紫色であることから、P. ternata f. atropurpurea ムラサキハンゲであると考えられる。 英語名はcrow-dipper dipperはカワガラス、ヒシャク、北斗七星などの意味がある。まさにカラスビシャクなのであるが、これは日本語を英訳したのではないか、と思う。中国名は半夏。塊茎が生薬として利用される。 |
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