イングリッシュ・ブルーベル(ヒメツリガネズイセン) Hyacinthoides non-scriptus 
 スコットランドのヨーロッパブナ林の中、萌え出た草の間から青紫色の花が見えた。花の形を見ると、野生のヒヤシンスのように見えた。元々スコットランドでは自然性の高い広葉樹林は少なく、川岸などにわずかに残っている程度。注意してみると、川岸の樹林の下にプリムローズと一緒に、点々と花を咲かせているものに出会えた。(Common) Blubell、English Bluebell と呼ばれているこの植物は、イギリスではカシ、ブナ、クリの森林の林床にカーペットのように一面を覆うように生育することもあるそうで、ネットにはそのような美しい景観が掲載されている。ヒメツリガネズイセンの和名がある。

 ブルーベルはベルギー、イギリス、フランス、アイルランド、オランダ、スペイン、ポルトガルなどの西ヨーロッパに生育する多年草。花序が直立し、より大きく開くスパニッシュブルーベルと対比してイギリスのブルーベルをイングリッシュブルーベルと呼ぶ。両種は容易に交雑して各地で広がりつつあるとの事。

 イングリッシュブルーベルは4月から5月にかけ、高さ10〜30cmほどの花茎を出して長さ1.2〜1.8cmの青色の花を咲かせる。花弁は先端部分だけが開く。花茎は頭を傾げるのが特徴の1つだそうだ。花色は濃いものから白色のものまであるとの事。ヨーロッパブナの林床に生育していたものは、6月はじめの段階ではすでに他の植物によって葉は覆われてしまっている。これでは光合成ができないので、カタクリのように、落葉樹の葉が展開する前に葉を出して花を咲かせ、やがて他の植物に覆われて休眠してしまう、春の妖精としてのライフスタイルなのではないかと思う。
スコットランド、川岸の樹林下に生育する Bluebell
ヨーロッパブナ林の林床に生育する Bluebell  (5月末)河畔林の林床に生育する Bluebell
Bluebell の花序Bluebell の葉
ブルーベル Hyacinthoides non-scriptusブルーベル Hyacinthoides non-scriptus
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