ツユクサ Commelina communis (ツユクサ科 ツユクサ属) |
ツユクサには湿っぽい印象を持っていたためか、梅雨草と思っていた時期がある。しかし、実際には夏になって咲き始める。早朝に観察すると水口から出水しており、露草が正しいのであろう。やや湿潤な路傍や荒れ地に多く、匍匐して?から根を出して広がり、寄りかかって登っていく。花を見ているには趣のある植物であるが、引っこ抜こうとすると節から切れ残って根絶は難しい。長い茎は1mほどにも伸び、他の植物などに寄りかかって伸びるよじ登る地這い植物である。 英語名は Asiatic dayflower アジアの1日花、あるいは昼の花という訳になろうか。日光が当たる時刻になって咲き始め、昼過ぎにはクシャクシャになって終わってしまい、苞の中に引き込まれてしまう。 |
花の形は独特。2枚の貝殻のような包葉の間から3つあるいは4つの花を次々と花を咲かせる。花柄は1つの苞の中に2本あるが、多くの場合は後ろにある長い花柄には花が付かず、退化して苞の中に隠れたままになる。前側の花柄には合計3〜4つの花が咲く。後ろ側の花柄の花にはめしべがないと書いたが、その後後ろ側の花柄に果実が形成されているのが見つかった。注意深く見てみると、後ろ側の花にもめしべがあるものがあり、条件がそろえば結実することになるようだ。秋らしくなって2つの花が咲いていることはまれとなり、詳細は来年の課題となった。
花の基本数は3であり、6枚の花被片の内、外花被片は3枚であり、上向きに1枚・下向きの左右に2枚であるが半透明で目立たない。3枚の内花被片の内、上向きの2枚は目立つ青色であり、下向きのものは白色。 おしべは6本あるが、花粉を生産するものは長く突き出した2本が主体であり、それ以外の4本は変形して小型の花に見えるような仮おしべとなっている。4本の仮おしべの内、3本は短く、1本は少し長い。おしべの配列は、奥から3+1+2の配列になっている。仮おしべの中心部が紫褐色になっているものと全体が同じように黄色になっているものがある。系統が異なるのか、時間的なものかよくわからない。どんな訪花昆虫をターゲットにしているのであろうか。 少し前になるが、東北の林野火災の学会報告で、火災の後わずかな期間で林床が緑になることを知って、びっくりした。主な植物はツユクサであるという。ツユクサが何年も林野火災を期待して待機していることになる。乾燥する岡山県の瀬戸内海沿岸などでは、林野火災の後に、簡単に植生が回復することはないが、森林破壊の後にツユクサが生育してくることなど考えられなかった。ところが、いつも散歩している丘で電波障害という理由で高木が伐採され、まず出てきたのがツユクサであることにはびっくりした。寝て待つ能力があるらしい。 |