シオクグ Carex scabrifolia Steud. (カヤツリグサ科 スゲ属
 シオクグは東アジア、日本に広く分布し、海岸にごく普通な多年草。高さは30-60cmくらい、地下茎を伸ばして広がり、細く硬い葉を出す。花期は春から初夏。茎頂に雄小穂、茎の中ほどに雌小穂を数個付け、小穂は夏に熟する。
 シオクグは海岸の少し奥まった所によく見かける。波の影響を直接受けるような場所にはあまりなく、入り江の奥や、河口の塩性湿地に良く見かける。土壌は泥質を好むようであるが、礫が多くても生育可能である。ヨシと混生していることも多いが、耐塩性はシオクグの方がより強い。塩気のない湿地でも生育し、むしろ生長が良いようである。耐塩性はあるものの、本当は塩の無い方が良いのであろう。
 クグとは、久々井や久々原など、海岸に近い地名に良く見るので、その関連の意味のある言葉かと思いつつも、正確な意味が分からず気になっていた。調べてみると、カヤツリグサ科植物の一種の古い呼び名であるという。現在のクグ Cyperus cyperoides そのものではないようである。塩湿地に生える蚊屋釣草の仲間のことか、それらの総称だったのだろうか。
 現在クグと名の付く地名の場所には、干拓が行なわれる以前の塩性湿地の時代に、シオクグがたくさん生育していたのかもしれない。
文章・画像:太田 謙
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