ヤチカワズスゲ Carex omiana (カヤツリグサ科 スゲ属) |
ヤチカワズスゲは北海道から九州、南千島に分布する多年草。湿原の表水のあるような場所に生育する。春に30cm前後の茎を出し、先端に3〜5個の小穂をつける。このような小穂の付け方のスゲは多くはないので、果実が付いていると同定は比較的たやすい。しかし、小穂は初夏には脱落するので目立たなくなり、かなりのベテランでも見落としてしまうことがある。注意してみると、秋でも果実が脱落した茎が残っていることが多く、注意したい。春の開花時にはほとんど葉がないようにみえる。やがて葉が伸びてくるが、葉の幅は2mmほど。 ヤチカワズスゲは目立たないものの、ミカヅキグサ属と同様に湿原を代表するスゲ属の1つである。温暖な地域には歴史の浅い湿地が点在することがあるが、ヤチカワズスゲが生育している小湿地は、不安定ではあってもそれなりの歴史を持っているものと考えている。 和名は「谷地蛙菅」であり、「谷地」とは湿原の事である。カエルのいるような湿原に生育するスゲとの意味とされるが、カエル吊りに使うスゲでもよいか・・・と思う。 |