ツクシクロイヌノヒゲ Eriocaulon nakasimanum (ホシクサ科 ホシクサ属) |
ツクシクロイヌノヒゲは、図鑑類では九州に分布する一年草とされている。しかし分布はもっと広く、九州だけではなく兵庫以西の中国地方、四国の香川県などからも報告されており、絶滅が危惧される種に指定されている。近隣に湿原があるようなため池の湖岸に見られることが多く、沈水状態では花茎が30cm以上にもなって水の中で水草のような状態で生育していることもある。同定が難しい仲間なので見過ごされてきたことも多いのではないかと思われる。 総苞片は鈍頭で、中にたくさんの花がある。花は明らかに黒色であり、汚れた褐色ではない。花の詳細な構造については、文章で表現することの無力さを感じるので、図鑑を参照されたい。またの機会に詳細な画像を掲載することとしよう。 学生時代、最初に広島の野呂山でツクシクロイヌノヒゲを見つけたときには、なかなか言い出せなかった。図鑑に記されている分布とは大きく離れており、とまどってしまったのである。以後、この仲間の同定には大変苦労することになった。よく似たクロイヌノヒゲはブナ帯の泥炭湿原に生育し、低地のツクシクロイヌノヒゲ、高地のクロイヌノヒゲという分布になるのであろう。 |
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