オギ Miscanthus sacchariflorus (イネ科 ススキ属
 オギは河原などに生育する多年草。ススキによく似ているが、草丈は2mを越える。種子でも繁殖するが、群落の拡大は地下茎で行うので、土壌は粘土質から砂質であることが必要で、礫を多く含む河原では生育しない。洪水などの増水には耐えることができるが、地下部が長期にわたって水没するような場所にも生育できない。したがって、広い群落を形成する場所は、中流の下部から下流の上部までの範囲であり、通常水位から高い高水敷などである。下流の感潮域では、ヨシ群落よりも高い場所に生育する。日本全国と朝鮮半島・中国大陸に分布する。
 ススキとよく似ており、区別に迷うことがあるが、オギは地中に横走する地下茎から地上茎を立ち上げるので、群落を形成していても株立ちすることはない。茎は堅く、ササの幹のようであり、簡単には引きちぎることができない。葉の幅も広く、花穂もより大型である。もちろん草丈も高くなる。
 オギは洪水によって倒匐しても、節から新たな地上茎を発達させて回復することができる。オギ群落が発達している場所は、増水時にも緩やかに水位が上下するような立地であり、濁流が流れるような場所ではない。増水時には砂やシルトなどが群落内に堆積するのが普通であり、倒れた茎から新芽を出すことができる能力は、このような堆積環境によく適応している。ススキも河原には生育は可能であるが、草丈と堆積・埋没に対する適応能力ではオギに負けている。しかしながら、オギは刈り取りには弱く、地上部を年1回刈り取られると、数年で急激に勢力が弱くなってしまう。この点ではススキに負けている。したがって、刈り取りが行われるとススキが優勢となり、放置されるとオギが優勢となる。
 オギは漢字で書くと「荻」であり、荻野・荻原などの地名や名字でお馴染みである。昔は洪積平野などに広く生育していたのであろうが、水田や畑地として開墾されてしまったものと思われる。オギ群落の発達している場所は、土壌が砂質から砂質粘土であり、根菜類の栽培にはもってこいの土壌である。最近は放棄水田などに群生しているのを見かけることも多くなった。本来はこのような時折冠水するような低湿地に広く群落を形成していたに違いない。
岡山市の百間川のオギ群落
千葉県銚子市の台地上の畑に発達するオギ群落
開花する直前のオギ開花する直前のオギ
開花したオギの花稔り始めたオギ
稔って種子を散布する直前のオギ稔った種子
オギは茎の上部に葉を付けるオギの葉鞘
葉の表面葉の裏面
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