ツルヨシ Phragmites japonica (イネ科 ヨシ属)



 ツルヨシは本州〜南西諸島、東シベリア・朝鮮・中国・台湾に分布する多年草。主に河川の中流域から上流域の礫原に生育する。急流にもよく耐えて生育するが、小河川では下流域でも生育している。砂地の場所に生育すると高さ2m近くになることもあるが、通常は1.5m程度まで。葉は互生し、葉鞘は通常紫色を帯びる。花は9月〜10月に咲き、ヨシによく似ている。
 ツルヨシの特徴は、長い匍匐(ほふく)茎にある。匍匐茎の出始めは通常の茎と変わらないが、長くなってやがて横になり、地面を匍匐して伸びていく。途中の節からは芽がでて新しい個体が形成される。この新しい芽は、最初は下向きに伸び、地面に接すると反転して上方に向かって生長する。地面に接した部分からは根が出て定着する。通常の茎も洪水で押し倒されると、同様に節から新しい茎が形成され、結果的に群落は面積を拡大することになる。洪水によく適応した種である。
中・上流域に生育するツルヨシツルヨシ
ツルヨシの茎(赤紫色を帯びる)ツルヨシの葉の基部
ツルヨシの匍匐茎匍匐茎の途中に形成された新苗
 ツルヨシはヨシとよく似ている。匍匐茎が形成されておれば、地下茎しか形成しないヨシとは容易に区別できる。しかし、小河川の下流域や溜池の湖岸などでは匍匐茎を形成せず、地下茎で繁殖するので区別が難しくなる。区別点としては、葉鞘が部分的にしろ紫色を帯びる点がポイントであるが、決定的なポイントは葉の基部に葉舌がないことである。


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