ヒオウギアヤメ Iris setosaアヤメ科 アヤメ属
 ヒオウギアヤメは本州中部以北から北海道、アリューシャン、アラスカ、アメリカ北部などに生育する多年草で、英語名はArctic Iris :北極地方のアヤメ。カナダでは、Beach-head Iris と呼ばれているとの事で、海岸の上陸拠点に咲くアヤメという直訳になる。カナダやアラスカなどでは海岸の湿地に生育していることが多いのかもしれない。

 冷涼な地域ではミズゴケの生育が旺盛で、典型的な湿原では泥炭が蓄積して周囲より高まった高層湿原が形成される傾向が高い。このような高層湿原は雨水で涵養されることになるので貧栄養な環境となり、ヒオウギアヤメのような湿原としては大きい植物の生育は困難となる。したがって、ヒオウギアヤメの生育する場所は湿原の中核部分ではなく、周辺の森林や草原との境界部分ということになる。

 ヒオウギアヤメの外花被片には美しい模様があり、その点ではアヤメに似ているが、内花被片が小さく、ほとんど目立たない。

 ここに掲載したものは栃木県日光市の鬼怒沼湿原(海抜2000m)で撮影したもの。撮影は1982年の8月、湿原の調査から湿原外に出る際の夕方に撮影したものであり、エクタクロームからのデジタル変換であることもあって彩度がやや低いものとなってしまっている。
ヒオウギアヤメ Iris setosa
ヒオウギアヤメ Iris setosa ヒオウギアヤメ Iris setosa
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