イグサ Juncus effusus var. decipiens (イグサ科 イグサ属)



 イグサは、学術的には「イ」で良いのであるが、文章に書いたりするには、どうもイでは書きにくい。ここではイグサと書かせてもらおう。イグサは日本各地の水湿地に生育し、樺太から朝鮮・中国にも分布する。沼沢地・湖岸・放棄水田などに良く生育する。地下茎は短いのでほとんど株状に生育する。葉は退化して茎を包む鞘となっている。緑の円筒状の部分は茎であり、花の咲く部位から上部は同様に円筒状であるが、苞葉である。
イグサイグサ

 イグサは灯心草とも呼ばれる。茎の中心部の髄を灯明の芯として使ったことによる。我々には、イグサは畳表の材料として身近なものである。以前は岡山平野や九州北部の平野などで広く栽培されていたが、最近は少なくなってきた。どうやら中国産が多くなってきたのではないかと思う。
 イグサの栽培は、冬季も比較的温暖で二期作が可能であるが、排水が不良な湿田で行われてきた。秋に稲刈りが行われると、すぐにイグサの植え付け準備が始まる。別の場所で育てていた苗を田植えと同じ要領で植栽していく。6月には草丈が1m以上になり、刈り取りが行われます。イグサの刈り取りが行われると、今度はその直後に代かきを行って、イネを植え付ける作業にはいるので、稲刈りと田植えの頃はとても厳しい労働であったようです。特にイグサの刈り取り時期は、イグサの乾燥と田植えが重なって、暑い季節でもあるので過酷な労働だったとのことです。
 イグサの栽培品種はコヒゲと呼ばれるもので、ほとんど花が咲かず、株分けで殖やす。畳表に使うには長いことと花が咲かないことが重要であったのであろう。
い草の栽培い草の栽培(4月9日 福山市にて)


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