ハタケニラ Nothosecordum gracile (ユリ科 ハタケニラ属
 数年前のことであったように思う。ノビルのムカゴを持ち帰り、畑に撒いておいた。ノビルの鱗茎を大きく育てて食べようという算段であった。やがて白い花がたくさん咲くようになった。この時点で気付けばよかったのだが、ノビルではなく、ハタケニラという帰化植物であるということに気づくのにかなりの時間がかかってしまった。画像をノビルとして掲載してしまい、訂正しなくてはならなくなった。振り返ってみれば、幾度もおかしいな、と思いつつだったのだが、図鑑を調べるチャンスを逸してしまった。手元に図鑑をおいておく必要がある。

 考えてみれば、花の形はノビルとはかなり違って美しい。ノビルらしい独特の匂いは皆無とはいわないが、非常に弱い。花が終わるころにムカゴを作りはじめるが、ノビルに比べて数は少ない。一方、地下のムカゴはゾッとするほどで、畑を耕すとこれが土の中に散らばって、害草となってしまう仕組みである。地上よりも地下での無性的に繁殖する戦略であり、まさに耕されることに着目しており、ハタケニラの名前はふさわしい。

 北アメリカ南部の原産で、観賞用に導入されたのではないかとの記載がある。英語名は Slender false garliic, Fragrant false garlic。細い偽ニンニク、香りのよい偽ニンニクという訳になる。その気で分布に注目してみると、ノビルほど見つけることはできず、水田地帯では見つけることが難しい。一方、花壇や畑など、乾燥した耕作地周辺に散見される。群棲している状況のものは見つけることができなかった。耕作されるとバラバラの単独状での生育になるのであろう。
ハタケニラ Nothosecordum gracileハタケニラ Nothosecordum gracile
花幼い花序
花序の基部に形成されたムカゴ花序の基部に形成されたムカゴ
花序の基部に形成されたムカゴ地下部の充実したムカゴ群
葉の表(幅は4-8mm)葉の裏面
 2017年の5月に高知大学で学会が開催され、参加した。高知市内を歩いてみると随所にハタケニラの花が咲いていた。駐車場のコンクリートとアスファルトの境目に一列になって繁茂しているし、街路の植栽枠にも花を咲かせている。我が家の周辺でみるハタケニラとは大違いで、大きく健やかに育っている。花弁の長さも長いようで、結果的にほっそりとした美しい花に見える。一般家庭のお庭にも咲いているのがあり、花の美しさゆえに大切にされている印象があった。
 国立環境研究所の侵入生物データベースでは、高知県も岡山県もまだ空白となっている。比較的最近の侵入なのであろう。
高知市のハタケニラ駐車場のアスファルトに咲くハタケニラ(高知)
街路の植栽枠に生育するハタケニラ(高知)岡山のものに比べて生育良好で葉の幅が大きい(高知)
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