フウラン Neofinetia falcata (ラン科 フウラン属)
フウランは関東地方以南の本州、四国、九州、南西諸島に分布する常緑の草本で、朝鮮・中国にも分布する。フウランの和名は中国名の風蘭に由来する。常緑樹の樹皮や岩場などに生育する。葉は厚く、長さ5〜10cm。太い数本の根を発達させる。根は樹皮や岩の表面に伸びるが、時として空中に伸びることもある。古くから栽培されており、園芸的な品種もある。栽培目的の採取によって、減少した植物の1つであるとされる。
フウランは希少植物
画像のフウランは島根県の常緑樹林を調査している際に、地上に落ちていたものを救出し、栽培したものである。枯れ枝に付いていたものが、枝が朽ちて落ちてしまったものである。木に登って植え戻すことを試みたが、簡単に登れるような若い常緑樹では安定的な生育は困難と見て、連れ帰ってしまった。
フウランのような樹皮着生の植物は、育ち盛りの若木では安定的に着生できない。幹や枝の円周がどんどん大きくなり、樹皮もはげたりするので、生長の遅いフウランはついていけないのであろう。フウランのような着生植物の生育には、生長速度がゆっくりになった、常緑の巨樹が必要なのである。フウランの保護・保全には森の保護が必要である。
岡山県では乾燥の著しい沿岸部では少なく、中部の吉備高原域にわずかに生育するのみである。
フウランの花
7月頃、白い可憐な花を咲かせる。花は昼間にはほとんど匂わないが、夜になると甘い芳香をだす。夜間によく目立つような明度の明るい花と強い香り、夜間に飛来するガ類により花粉が媒介されるものと思われる。自然の中で、どのような蛾が訪れているのかは知らないが、おそらく小さく、高い樹上を中心に生息するガなのであろう。
フウランの根
ラン科植物の根は一般に太く、本数が少ない。このような太くて少ない根でよく生活していけるものだと思うが、これが結構優れものらしい。乾燥すると白色になるが、水がかかると水を吸い込み、緑色になる。貯水タンクとしても機能するのではないかと思う。
フウランの根の皮層は厚くてスポンジ状であり、ここに菌類との共生の場がある。このランと共生する菌根菌によって、水分や栄養分を吸収しているのである。我々が肉眼で見るランの根は、菌根菌との交流の場であり、実際の根の機能はこれに菌根菌を加味して考える必要がある。