シュンラン Cymbidium goeringii (ラン科 シュンラン属)
シュンランは常緑の草本。北海道から屋久島まで分布し、中国にも生育している。明るい二次林に生育していることが多く、森林の遷移とともに減少しつつある植物の1つである。カンランとともに、東洋ランの代表であり、花の色や形が通常のものと異なっているものは珍重されてきた。
和名にあるように、春に咲くランの代表であり、水墨画の題材となったり、お盆に彫られたりしてきた。花を塩漬にし、お茶(蘭茶)としても利用された。最近はお茶にすることを思いつくほどの量は生育していない。近年の減少について、乱獲が原因であるとの意見もあるが、遷移の進行に伴って林内照度が低下したり、土壌環境が変化したことが大きな減少の原因ではないかと思う。ホクロ、ジイババなどの別名がある。
シュンランの花は、花弁状のものが5枚あるように見えるが、単子葉植物であって、基本数は3である。上と左右に開いた3枚の花弁と、その内側に開いていない緑色の花弁が2枚上側から被さっている。その下側にひだのある白色の花弁(紋様のある)が1枚。これで合計6枚になる。外側が3枚、内側が3枚である。この外側の花弁らしい3枚は、実は萼である。
野外では、慣れない間はシュンランとヤブランを間違えやすい。ヤブランはユリ科の植物であり、かなり違う仲間なのだが、すっと伸びた葉には共通した部分がある。シュンランの葉の先端はやや尖っているなどの点でも区別できるが、最も確実なのは少し根元の土を除いて地下部を出してみることである。まず、根が太くて本数が少ないことはラン科の特徴の1つである。それから、古い株の根元が膨らんで球根状になっている。これをバルブという。バルブは葉がなくなっても数年間分は残っており、貯蔵庫として機能している。