シュロ
Trachycarpus fortunei
(
ヤシ科
シュロ属)
シュロは九州南部に自生地があり、中国に分布する常緑の常緑高木。各地で栽培されていたものが野化している。雄花だけを付ける株、雌花だけを付ける株、両方を付ける株がある。5月に房状の花穂を出し、果実は秋に黒く熟し、鳥によって散布される。幹は太らず、枝分かれせず、樹高だけが高くなる。幹の頂端から長い葉柄のある、掌状の葉を付ける。葉の葉脈は塀鉱脈であり、単子葉植物である。
幹は葉鞘である繊維(いわゆるシュロ毛)によって覆われている。この繊維は分解しにくく、シュロ縄などに利用されてきた。水に浸かってもほとんど腐らないので、石油製品のない時代においては非常に貴重な資材であった。シュロ縄は船を係留するロープとして、庭園の竹垣や袖垣などを結ぶひも、建築用の縄などに利用され、繊維を束ねてブラシとして使用したりした。葉を葉柄に付けたまま裂いて編みなおし、はえ叩きにしたり、シュロ帚を作ったりした。
葉は古くなると先端が折れて垂れ下がる。この点はよく似ている
トウシュロ
とのよい区別点となる。シュロは、このトウシュロと対照させてワジュロと呼ばれることもある。
上の画像は日本とは思えない雰囲気であるが、岡山県笠岡市で撮影したものである。耕作放棄地に発達した二次林の一部であるが、谷底に向かう斜面下部ではシュロが亜高木層に優占状態となっている。今までの植生調査でも、シュロは放棄畑と関連していることが多く、通常の二次林の中に出現することは少ない。耐陰性は高く、土壌的には良好な場所が好きらしい。
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