ヒルムシロ Potamogeton distinctus (ヒルムシロ科 ヒルムシロ属)
ヒルムシロは全国のため池や水田、小川などに生育する多年生の水草。水中には線状の水中葉があり、水面にはスマートな光沢のある浮葉が浮かぶ。浮葉は水に浮かび、濡れないために水をはじく。水位が低下した場所では普通の草のように根をはって葉をもたげて生育する(陸生形)。土壌が十分湿ってさえおれば、水陸両用なのである。花期は5月から10月。和名の由来は「ヒルのムシロ」である。あまりお近づきにはなりたくないイメージである。
沈水状態の水草は水の中から光合成の材料である二酸化炭素を吸収し、水中に酸素を放出する。結構、これが大変であるらしい。空気から直接ガス交換を行う方が簡単であり、条件さえ整えば葉を水面に浮かそうとしている。ヒルムシロの陸生形はその対応の形の1つであり、抽水植物の形態である。水際に生育する植物の多くが抽水植物であるのも、大気との間で直接にガス交換を行うことが有利であることを示しているのであろう。