ミクリ Sparganium crectum  (ミクリ科 ミクリ属)



 ミクリは沼沢地や流れの緩やかな水路などに生育する多年生の草本。北海道から九州に分布し、アジアに広く分布する。この仲間では最も大きくなり、高さは1.5mを越えることもある。
 葉は三綾形であり、根元に近い部分の断面は明瞭に三角形であるが、上に至るほど不明瞭になり、普通の葉のようになる。花が咲いていないときにはスゲ類の葉と区別しにくいが、三綾形であることと、さわると柔らかく、スポンジ質であること、葉の先端が円頭であることなどから区別できる。水の流れの速い小川や水深の深い場所に生育する際には葉は水中に発達したり、水面に浮かんで発達することがある。そのような場合は水上葉に比べて更に柔軟である。
 栗を連想させるような果実がなり、和名の「実栗」となっている。
ミクリミクリ
ミクリの花序 上が未熟な雄花 下が雌花ミクリの雄花ミクリの果実ミクリの葉の先端(円頭)
 ミクリは、昔は水田の周辺の水路などに普通の植物であった。基盤整備や水路の改修、あるいは除草剤などによって少なくなってきた。
 画像のミクリはダム湖の湖岸に生育していたものを岡山県自然保護センターに移植したものである。移植してみてわかることであるが、生育は旺盛であり、見る間に広がってしまった。ヌートリアが茎を食べるので、心配であったが結果は逆であり、食べ散らかした地下茎が下流に流れ着き、かえって分布範囲は広がり、個体数は増えてしまった。昔は農作業などに伴って、地下茎があちらこちらに流れ着き、増える機会もあったのであろうと思われるが、コンクリート製の用水路では生育は困難である。
 ミクリの生育地は水生昆虫が生育するには好適な環境であると思う。ミクリの生育するような環境が所々にあってよい。

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