オオミズゴケ Sphagnum palustre (ミズゴケ科 ミズゴケ属) |
オオミズゴケは温暖な地方から寒冷な地方まで世界に広く分布するミズゴケ。湿原の周辺部を中心に、湿潤な森林の林床から湿原の中心部にまで生育がみられる。暖温帯に発達する湿原に生育するミズゴケとしては、最も普通な種である。ミズゴケではあるが水没状態で生育することは好まず、水から離れて盛り上がった状態で良く繁茂する。特に温暖な低地では水湿地の空気中の湿度が高いイヌツゲ群落などの下で群落を形成することが多く、冷涼な地域に至るにつれ、湿原の中心部でもみられるようになる。 ミズゴケ類は胞子体を形成することは少ない。おそらく、植物体の断片から再生することによる繁殖がもっぱらなのであろう。実験してみると、枝葉などから容易に新たな個体を再生する。下の画像はオオミズゴケの胞子体である。黒光りしているものが胞子嚢である。全体として軟弱であり、比較的短時間で分解するので、出会うことは少ない。
湿原におけるミズゴケの採取は、大きな問題であったが近年は様相が変わってきた。深山にまで分け入ってミズゴケを採取する人材が少なくなったこともあるが、外国から国産のものに比べて安価なミズゴケが輸入されるようになったからである。このような状況により、国内のミズゴケは採取されることが少なくなったが、湿原破壊の輸出になってしまっている。さて、どこからこれらのミズゴケはやってきているのであろうか。オオミズゴケの採取: オオミズゴケは園芸用資材として洋ランの植栽に用いられたり、培養土に混入されたりする。このような利用のために各地の湿原から大量に採取されてきた。成長速度は比較的速く、実験的には1年で50cm以上も生長させることが可能である。このような旺盛な成長速度のため、ミズゴケを採取しても数年で元に戻るが、小型のラン科植物などはミズゴケと一緒に採取されてしまい、ミズゴケ採取の際の立ち入りや伐採などによる攪乱と合わさって、湿原は大きく荒廃してしまう。 |