ナギ Nageia nagi (マキ科 ナギ属
 ナギは常緑の高木。本州では奈良の春日神社、和歌山の熊野速玉神社、山口の小郡などに群落があり、天然記念物などに指定されている。四国・九州・琉球・台湾に分布する。神社やお寺に植栽されることが多く、時折庭園木としても植栽されている。

 樹高は20mほどになり、直径50-80cmほどになる。樹皮は黒褐色で鱗状にはがれる。ほぼ平滑で磨いたかのような特徴ある樹皮である。葉は対生で長さ4-8cm、幅1-3cm。平行脈ではあるものの、楕円形の葉は裸子植物とは思えにくい。雌雄異株で、花は5月頃に咲き、直径10-15mmの丸い種子が付くという。

 奈良の春日神社ではナギのほぼ純群落があるとのことで、ナギがアレロパシー物質を生産するのではないかと言われている。ナギラクトンというアレロパシー物質を持っていることは確実なのであるが、シカとの関係もあり、あまり強いアレロパシーを引き起こす程ではないのかもしれない。材は緻密で年輪が不明瞭であるため、彫刻や家具などに利用される。
奈良春日大社のナギナギの葉は対生
新緑の頃のナギ冬には部分的に葉が黄色くなる
平行脈のナギの葉裏面の拡大;気孔列が見える
5月に花が開く(雄株の雄花)5月に花が開く(雄株の雄花)
ナギの樹皮ナギの樹皮
 ナギは凪にも通じ、暴風雨が吹かないことから船の航海安全を祈る縁起物ともされ、葉が対生であることから夫婦仲睦ましいことの縁起物ともされる。夫婦仲良く穏やかな航海を祈るということである。虫に食われている様子は見えないので、古い裸子植物であって食害する昆虫などが居ないのではなかろうか。

 楕円形の葉はイヌマキなどのマキ属とはイメージが重なりにくい。楕円形の葉をドンドン細長く引き伸ばしていけばイヌマキのイメージになりはするか、と思っていたが、APG体系では同じ科の別属とされた。そのほうがイメージは合っている。
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