釣忍(つりしのぶ)



 シノブは鉢に植栽されるほか、シュロ縄でしばって吊し、「釣忍」として鑑賞することも多い。夏の夕方、釣忍に水を打って、縁台で将棋を指しながら夕涼みする風景は懐かしい想い出である。下の画像は我が家の釣忍である。ミズゴケを芯に野生のシノブをはわせたものである。最初は鉢に植栽していたのだが、毎年ミズゴケを貼りたしたので、大きくなりすぎて、つり下げるようにした。
 このシノブは、ツル植物を卒論のテーマにしていた守屋徳隆君が採集してきたものである。彼は採取してきたシノブを標本にもせず、屋外に面した廊下のバットの中に投げ込んで、棚に押し込んだまま放置してしまった。もちろん、シノブは枯れてしまったのであるが、翌年の春、このバットに雨が降り込んだ。ふと見ると、なんとこのシノブが緑の葉を出しているではないか。休眠中の冬とはいえ、半年近くも水ももらわずに生きて復活したシノブを見殺しにはできず、鉢に植え込んだわけである。まさに「土(水)がなくても堪え忍ぶ」であった。
 それから12年以上の歳月が経過しているが、今では我が家の松の木にぶら下がって、フウランとともに緑の葉を付けている。
 


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