岡山県南部の森林植生 -地質・土壌と植生-
○寺下史恵(岡山理大・総情院)・越智正樹・能美洋介・波田善夫(岡山理大・総情・生地)
森林植生の発達が地質や地形によってどのような影響を受けているかを明らかにすることを目的とし、岡山県南部に位置する山陽町馬屋で、植生調査を行った。異なる地質・地形と森林植生の関係について調査中であるが、今回は凝灰岩地域における森林植生と地形の関係について発表する。
調査方法
植生調査資料から群落区分を行い、植生図を作成した。各調査地において長谷川式土壌貫入計により貫入深度を計測した。表層土壌を採取し、土壌三相を測定した。2500分の1の地図により、調査地の集水面積と5mメッシュのDEMを作成した。
結果
表操作の結果、馬屋地域の森林植生はアカマツ群落、コナラ群落、アラカシ群落、ノグルミ群落などに分類できた。
1.植物群落
アカマツ群落
山頂や尾根型斜面部に発達しており、現在マツ枯れが進行している。この群落は斜面長を反映していると考えられる典型群、ウスノキ群、コシダ群に下位区分できた。
コナラ群落
緩傾斜の山頂から谷型斜面に発達しており、アカマツの倒木が多く見られた。草本層にコウヤボウキやヤマウグイスカグラが見られ、比較的明るい林であった。
アラカシ群落
山頂と尾根に囲まれた緩やかな谷地形と山裾の水路付近に見られた。林床は暗く低木層にサカキや草本層にヤマイタチシダが見られる。
ノグルミ群落
急傾斜で礫が多い谷地形に分布していた。高木層にテイカカズラ、草本層にオクマワラビなどが見られた。
2.群落と集水面積
これらの群落と集水面積の関係については、アカマツ群落からコナラ群落、アラカシ群落への系列にしたがって、集水面積は広くなる傾向が見られた。このことより集水面積の広さが群落の成立に大きく関係していると考えられる。ノグルミ群落は谷地形に分布しているにもかかわらず集水面積がそれほど広くなかった。これはノグルミ群落の成立要因に日照条件などが大きく関与しているためと考えられる。
群落名
1:アカマツ群落典型群
2:アカマツ群落ウスノキ群
3:アカマツ群落コシダ群
4:コナラ群落
5:アラカシ群落
6:ノグルミ群落
各群落と集水面積の関係
2002年3月(仙台) 日本生態学会第49回大会 講演要旨集、279p.
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