加計学園生態システム園に発達する森林の歴史
―年輪解析による植生の発生・発達過程の解析―
長谷川資1・○寺下史恵2・波田善夫1(1岡山理大・総情・生地、2岡山理大・総情院)
T. Hasegawa, F. Terashita & Y. Hada :Vegetation changes following Pine wilt disease in Kake Botanical Garden, Okayama City, Japan
1.目的
加計学園生態システム園において年輪解析を行い、当地における植生遷移、特に松枯れの始まった年代とその後の遷移などを解析することを試みた。
2.調査地及び調査方法
岡山県南部に位置する加計学園生態システム研究施設内の観察道建設の際に伐採された樹木の切り株から地際円盤約500を採取した(2000年2月〜4月までに大部分完成)。採取した円盤を持ち帰り年輪幅を計測した。
3.結果・考察
@樹木の侵入の観点から
現在生育しているアラカシの大部分は1972年以降に侵入してきた個体であった。この時期はマツ枯れの時期と一致しており、アカマツが広い範囲で枯死して初めて成長できたものと考えられる。当地域のアラカシ林はマツ枯れなくしては発達し得なかったことが明らかになった。
Aアカマツの成長速度の観点から
アカマツの年輪幅には次第に年輪幅が増加する時期と減少していく時期があった。周期は個体で異なっているが、平均すると約5年間の増加し続ける期間とその後約5年間の減少し続ける周期が見られた。年輪幅の増加期間は葉量が増加している時期であり,減少期は葉量の増加がなく樹高成長に資源配分しているか、他の個体に被陰されている状態であったと考えられる。この周期はマツ枯れにより競争木が減少し成長が盛んな時期と隣接木との競争が発生している時期の繰り返しの結果であると考えられる。
図.堆積岩地域における各樹種の侵入年代と本数
4.まとめ
- 当地域のアラカシ林はマツ枯れによって発達できたものであった。
- アカマツの成長には樹木の成長期間と競合期間の約10年サイクルの繰り返しが見られた。
- 年輪幅の増加はマツ枯れによると考えられ,当地域では、1972年頃の大規模なマツ枯れの後,2回の小規模なマツ枯れがあったと考えられる。
日本生態学会中国四国地区第46回大会講演要旨、p.14.