草刈頻度の異なる旭川高水敷の植生比較 ○山本圭太1・妹尾三嶺2・高橋和成2・波田善夫1 (1岡山理科大学・総合情報、2岡山一宮高校)
はじめに
 市街地を流下する河川の高水敷の緑地は、地域住民の生活環境の一部になり、その植生管理は社会的に重要な課題である。本研究では、草刈管理された高水敷の植生調査と土壌の物理性を調査し、草刈頻度と植生の関係を検討した。これにより高水敷植生の管理について考察を行った。

調査地と方法
 岡山県岡山市の市街地を流下する旭川の河口から8km〜14kmの流域には、草刈頻度の異なる高水敷がある。A:後楽園周辺では、年3回(6月・7月・10月)、その上流のB:西河原では年2回(6月・10月)、さらに上流のC:原では年1回(7月)の草刈が行われている。植生調査は、A・B・C、およびD:1995年整備後から刈取されていない放置区で、方形区法により219区画を調査した(2002年6月〜7月)。調査結果はVEGET(1990 波田・豊原)により表操作し、総合常在度表を作成した。バイオマスは、地上部の植物体を刈取り、その乾燥重量(1m2当り)を求めた。土壌硬度については、山中式土壌硬度計で測定し、表層土壌(約500g)の粒径の組成を求めた。

結果・考察
1. 年3回刈取地区:踏付け傾度に従ってギョウギシバ群落、メヒシバ・イヌビエ群落、オオバコ・シロツメクサ群落、セイバンモロコシ・ヨモギ群落に区分された。ギョウギシバ群落はマサ土を覆土した踏付けのある場所で発達していたが、他の場所は粒径が0.5mm以下の細粒成分を主体とした土壌であった。セイバンモロコシ・ヨモギ群落を除く平均群落高は11cmであった。
2. 年2回刈取地区:へラオオバコ・カタバミ群落が粒径の0.5mm以下の細粒質土壌に発達した。平均群落高は31cmで、バイオマス量は放置区の約32%であった。
3. 年1回刈取地区:平均群落高87cmで、オオアレチノギク・メヒシバ群落、チガヤ群落、ヒメジョオン・ヨモギ群落、セイバンモロコシ・ヨモギ群落、オギ群落が区分された。バイオマス量は放置区の約74%であった。

まとめ
 草刈回数が、年1回と年2回では植生が異なった。シナダレスズメガヤ群落は、7年間の放置区で発達していたが、刈取区域では生育が抑制されていた。踏付けが強いと群落高は低下したが、刈取のみでは回復した群落の高さは82cmであった。群落高は、土壌硬度との関係が強く、草刈回数には依存していなかった。草刈の労力と刈り草の処理には、多大なエネルギ−を必要とする。そのため、植生管理の新たな方法として草刈と踏付けを併用した高水敷植生の管理が考えられる。それにより、刈り草量の減量化や人々が楽しむことができる緑地の形成が容易になる。粘土質の高水敷土壌では、草刈と踏付けによりオオバコ・シロツメクサ群落などの群落高の低い植生への植生転換が予想される。

地点刈取回数群落 調査
区数
出現
種数
平均土壌
硬度(mm)
平均植
生高(cm)
後楽園
ギョウギシバ
25
29
11
メヒシバ・イヌビエ
11
21
22
10
オオバコ・シロツメクサ
11
19
14
セイバンモロコシ・ヨモギ
11
23
18
82
西川原
ヘラオオバコ
10
28
16
31
オオアレチノギク・メヒシバ
15
26
22
37
ギョウギシバ・メヒシバ
12
22
22
20
ヒメジョオン・ヨモギ
22
43
17
81
チガヤ
82
52
11
92
オギ
10
18
10
175
セイバンモロコシ・ヨモギ
11
26
136
放置区
シナダレスズメガヤ
32
11
109
ヨモギ・メドハギ
12
27
11
95
植生学会第7回大会講演要旨集 (2002年10月)、p.54.
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