溜め池法面の植生
−斜面方位および河川堤防法面との比較−
I98G062    福田 明子 
1.はじめに
  河川の堤防法面は、洪水を防ぐだけでなく、特に都会においては環境教育・自然体験の場として、また生物の生息空間として、自然性の高さが求められている。現在の堤防法面の植生はどのような物であるのか、そしてより自然性の高い溜め池の法面とはどのように違うのであろうか。
 河川の堤防法面と溜め池の法面を秋から冬にかけての最も日光の当り方に差が出る南北法面に着目して調査し、両者の違いを把握するとともに、植物の生存戦略を明らかにすることによって、河川の堤防法面の自然性を向上させるための糸口を見つけ出すことを試みた。

2.調査・解析方法
 2001年9月から12月の3ヶ月間にわたり、岡山市北部を中心とした溜め池(19ヶ所)、及び旭川中原橋付近(2ヶ所)で調査行った。
@Braun-Blanquet法(1969)に基づき219スタンドの植生調査を行った。
A調査資料を植物社会学表操作プログラムVEGET(波田・豊原、1990)を用いて表操作し、群落区分を行った。

3.結果・考察

北向き南向き
結果・考察
平均出現種数 池:16種
川:20種
池:11種
川:11種
北向き法面の方が多い。
多年草の比率 池:53.3%
川:28.6%
池:76.2%
川:66.7%
南向き法面は多年草の割合が大きい。刈取り草地に生育する多年草は地下部に大量の栄養分を蓄積している場合が多い。そのため、日光がよく当るが乾燥する南向き法面でも多くの多年草が生育できると考えられる。
1・越年草の比率池:26.7%川:57.1%池:19.0%川:33.3%北向き法面の方が多い。これは、1・越年草は根があまり発達していない為、水分条件の良い北向き法面に多く生育していると考えられる。
秋に芽生える植物 池:11種川: 5種池:7種川:1種 北向き法面の方が種数が多い。冬期に水分が必要である秋に芽生える植物は、水分条件の良い北向き法面に多く生育していると考えられる
植生高川:33.2cm 川43.8cm刈取り時期が同じ旭川堤防法面において、南北で10cm以上の差がある。南向き法面の方が日光がよく当るので、早く植生高が高くなる可能性があると考えられる。


まとめ



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